今回はタイトルにある通り。
ケーキの切れない非行少年たちを読んだので、そのまとめレビューを。
帯に「カズレーザー絶賛!」って書いているあれで。
結構商店なんかでは人気の本だったりします。
やっぱりこの手の本って、なんか興味本位というか、怖いもの見たさで手に取っちゃうんでよね。
んで。
僕は本屋に行くときに「役に立つ本」と「興味がある本」の2種類をセットにしてよく買います。
役に立つ本はビジネス系が多くて、興味がある本っていうのは、本当に興味本位の本。
その中でこのケーキの切れない非行少年たちっていうのは、まさに「興味のある本」っていうジャンルの1つで。
それが手に取った理由でした。
あらすじ
一応このケーキの切れない非行少年を見たこともない人もいると思うんで、あらすじだけを伝えておくと。
あの「ケーキが不自然に切られている絵を持った少年」が印象的な表紙の本ですね。
んで。
まずこの本では、元医者の人が、少年院で勤務する、「実体験の中から」描かれています。
だから出てくる話がリアル。
そのうえで、僕らの常識がまったく非行少年の常識とは違った世界を見ていることが、最初に描かれます。
それこそある実験でケーキを3等分に分けてください、と言われた非行少年は均等に3等分することができず、おぞましい切り方で3つに分けてる図解なんかも出てきて。
また別の賞では「人殺しをする自分は優しい人間だ」という風に理路整然と言ってのけたり。
しかもこれは「嘘をついて」自分は優しい、と言っているのではなく、本心で言ってることが語られます。
もうここらへんで僕らの常識と、非行少年たちが持っている常識とでは全く違った世界があることが想像つく。
そうした「非行少年たちの実態」が前半に描かれ、中盤には「非行少年の特徴」、そして終盤では「教育をどう行っていくか?」といったことが描かれてきます。
僕は独身ですが、僕のように興味本位でこの本を買ったら「前半から中盤」にかけてを読むだけでかなり楽しめる内容。
(楽しめるっていうのは便宜上で使ってます)
ただ、結婚していたり。
はたまたお子さんがいる人なんかは、「どうやって教育をしていったらいいのか?」という視点から後半はかなり役に立つと思うんで、手に取ってみるといいと思いますね。
とかく。
- 非行少年の実態
- 非行少年の特徴
- どう教育をしていくべきかの改善策
大きく分けてこの3つのパートからなるのが、ケーキの切れない非行少年たちという本の構成とあらすじって感じですね。
非行少年の実態
んで。
まずこの本を読んでびっくりしたことが、作者も最初のほうに語っていますが、「非行少年と相対するのは恐怖だった」
そんな風に少年院で務める前は感じていた、と書いています。
しかし、実際に努めて彼らの前に行ってみると、その印象は全く違っていることに気づいて。
意外にも「挨拶がきちんとできたり、笑顔で少年院にいたり、普通に生活している」という点に驚いたと書いています。
この実情は僕自身もびっくりして。
少年院と聞けば、そこは薄暗く湿気にあふれていて。
なおかつそこで生活している少年たちは、暗くて、覇気がなくて、敵対心しかない人、という印象だと思っていました。
でもそうじゃない。
そんな人たちが少年院ではあふれていた、と書いています。
作者も書いていますが、「本当に犯罪を犯した少年たちなのだろうか」と疑うほどで。
普通の少年と何ら変わらない見た目だそうです。
非行少年の特徴
この本の中では具体的に非行少年の特徴を5点セット+1として挙げていますが、僕が印象的だった特徴をまとめていくと。
少年たちに共通するのは、「認知がゆがんでいる」という点。
これは所々、図解で書いている絵をぜひ見てみてほしいんですが、本当に狂気じみた絵をかきます。
これが何を意味しているのか、というと。
要するに「僕らの見ている世界と、少年たちの見ている世界が違う」という点。
僕はそれに度肝を抜かれました。
作者は、イメージしていた非行少年の特徴とは全く違った第一印象から、違和感を覚え「本当にあらゆる犯罪を犯した少年たちなのか?」と感じるわけですが、1枚の絵を見せそれを模写してもらう研究をしました。
そこで判明したのが、見せた絵と全く違った絵を描く少年たち。
これに驚愕し、少年院勤務の人たちに見せたところ、誰しもが驚いた顔をしていて。
要するに、今まで警護をする人たちは、「少年院にいる少年たちを学校の悪ふざけをする子供」と同様に扱っていたわけでした。
ただ、少年たちは「認知機能」がゆがみ、僕らとみている世界がまったく異なって見えている、ということにその時初めて気づくわけです。
そこからこの本は進んでいくわけで、第一章の「反省以前の子供たち」につながっていきます。
つまり「反省以前の子供たち」というのは、「なぜ人を殺したらいけないのか」「なぜ強盗をしたらいけないのか」
そういった善悪がついておらず、「反省するための自責の念」がまったくない状態にある、ということをこの時初めて知ったわけでした。
この最初から第1章と第2章に分けて、非行少年の特徴が描かれ、僕らの持っている常識と少年たちが持っている常識との違いに、本当に驚かされます。
正直、子供を持っていない独身の人や僕のように「興味本心」でこの本を買ったという人であれば、この章を読むだけで、「少年たちの世界」を垣間見れるかと思います。
どう教育していくべきか
そして少年たちの実態と特徴を解説した後は、「どう教育をしていくべきか」というところに、この本のスポットは移っていきます。
というのもこの本の著者は、「犯罪者を納税者にする」という大きな目標を持っているため、「更生」という点に重きを置いているからです。
細かく犯罪者の少年たちにどれぐらいの税金が使われていて、彼らがもし社会復帰し納税をするような社会貢献をする人になれば、どれだけ経済にいい影響をもたらすのか。
こういったところも語られます。
ですから、著者の人は「犯罪者を納税者に更生する」ためとして、現場で働いているわけです。
ここでも1つ驚かされたのは、「非行少年たちの特徴」でも挙げられていますが、「少年院に入る非行少年の特徴」は何も特別なものではなく。
「集中力がない」「注意力がない」「席に座ってられない」
といったように、一般の人でも当てはまるような事柄が挙げられています。
これをより深く掘っていくと先ほど挙げた「認知のゆがみ」につながる吉兆だということ。
つまり、今子供がいて、集中力がなく、先生によく注意される、という子供を持っている場合。
もしかすると、「僕らとみている世界が違う」のかもしれない。
そうなると、僕らの価値観は意味をなさず。
「なぜ人を殺してはいけないのか」
「なぜ人から奪ってはいけないのか」
そういった善悪がつかない子供になってしまうことも考えられる。
そこでこの本では「最後の章」にてどうやって教育を施していけばいいのか。
それが描かれます。
大きくは小学校2年生程度でその吉兆が表れ、いじめや家庭内暴力など。
そういった事柄も大きく影響するとしています。
だから、僕のような興味本位で読む人だけではなく。
「教育」という観点で親の視点から見ても、かなり役に立つ本で。
そういう人は、むしろ「後半部分」を重点的に読むと役に立つかと思います。
興味本位で本を手に取る人は、当事者意識がないので、前半部分が一番楽しめると思いますが。
感想レビュー
かなりざっくり分けると、このケーキの切れない非行少年は
- 非行少年の実態
- 非行少年の特徴
- どう教育をしていくべきかの改善策
この3つのパートから成り立っていると伝えました。
僕は独身なので、後半部分は実践編といった感じで飛ばし飛ばしでしたが、前半部分はかなり興味深く読めました。
特に随所に出てくる「絵」は、度肝を抜かされて。
ケーキを等分に分ける、というのもそうだし。
認知のゆがみを最初に取り上げた、「少し複雑な絵の模写」も、ぞっとするものでした。
そういえば、よく犯罪者に絵を描かせると、奇妙でぞっとする絵を描く、なんてことが言われたりしますが、まさしくあれですね。
だけど、それって社会が生んだひずみで、決して別の世界の話ではないんですよね。
この本の中では「非行少年になる経緯」も描かれますが、多くは「いじめ」であったり、「家庭内暴力」「勉強が分からない」
こういった社会のひずみから、生まれてくるものです。
ですから、まったく別の世界の話ではなく、むしろ身近な話で。
目を背けてはいけない現実と、非行少年たちがいるという現実をきちんと考えなくてはいけないわけです。
そんなことを思い知らせてくれる本でしたね。