今更感が強いですが、ジャンプマンガの「トリコ」をぼくは読んだことがありませんでした。
マンガが大好きなので、映画もやってマンガもヒットしてと、「トリコ」というマンガの存在は知っていたには知っていましたが、なぜか手を出すには至らなかったのがこのマンガでした。
作者のしまぶーこと、島袋光年のトリコ以前の作品「たけし」は全巻読んでいたんですが、この度、2日でトリコを全巻読み終えました。
んで、読み終わった感想としては「島袋光年の夢が叶った作品がトリコなんだな」って言うのが読み終わった第一の感想でしたね。
しまぶーの夢が叶った作品
島袋光年のトリコの前作「たけし」
まぁこれは、しまぶーの不祥事を機に突如として連載しなくなったマンガでしたが、ぼくはこれが大好きでした。
トリコはボンチューと同一人物だろ。って感じ。
笑える要素もありながら、緊迫した戦闘シーンもある。
どこから心暖まるハートフルな場面もあるのがたけしの特徴。
今作のトリコは、たけしの笑える要素と緊迫した戦闘シーンとを真逆にしたようなマンガ。
笑える、ギャグ的要素は少なめにし、ふんだんにバトルシーンを盛り込んでいたものでした。
これこそまさに、しまぶーが描いていた「ずっと書きたかったマンガ」の様に気がしました。
前作のたけしの中で、作者のしまぶーがキャラクターとして出てくる場面が何度もあるんですが、そこで「おれはワンピースみたいなカッコイイバトルマンガを書きたいんだよ」と、主人公たけしとごん蔵としまぶーとの口論を実際に書いています。
それも何度も。
でもたけしというマンガの「たけし」というキャラクターは、どっからどう見てもコミカル。
路線が最初からバトルマンガではなかった設定なので、最初は所々にしか緊迫したシーンを描けなかった様に思います。
(まぁ途中の魔界編とかは、それが取っ払われてましたが笑)
そんなトリコの前作のときから「こんな風なマンガを書きたい」という、憧れが、今作のトリコの元になったんだと。
その証拠に、トリコというイケメンキャラくが主人公で、小松という不細工キャラがサブになっています。(たけしは真逆)
また、バトルに含みを持たせる為に、料理の成分や物体の構築、その他様々な理論を応用して、バトルに深みを持たせているのも印象的でしたね。
(たけしのときは、理論度外視だったので)
トリコ15巻でのグルメピラミッド編なんかでは、ゼブラが流されて行方不明の小松に「反響マップ」を開きながら探しに行くというシーンがありますが、反響マップでいかにカロリーを消費するのか、これをカラオケとの日常シーンとの比較を用いてかなり論理的に説明していましたし。
(5時間での反響マップ使用は360万キロカロリーで、トライアスロンをノンストップで240回くらい返したのと同等みたいな)
最近のマンガでは、ただ単にストーリーの発想やアイデアだけで描くんじゃなくって、現実世界の事実を用いて、想像をよりリアルにする傾向があるように思います。
想像と現実との境界をぼやかしているというか。マンガを妄想の世界だけじゃなくって、リアルな世界でもあるように見せる技法ですかね。
それでより深みや現実味を感じられるようになる訳ですが、このトリコというマンガも、トリコのスゴさを現実の色んなシーンと比較して感じられるようになっています。
もちろん、現実の事実を伝えながら、マンガでのシーンに盛り込んで行くので、作者のしまぶーはかなり勉強したんでしょうね。
そんな努力も相まって、ヒットしたマンガというのがトリコへの感想でした。
だから「夢が叶った作品だった」と。
よくグルメ界に入ってからのインフラがスゴいとか、映画が大分失敗に終わった。
そんなトリコの感想を見かけますが、しまぶーをたけしの時代から見て来た身としては、バトルマンガで強さのインフラを起こしてしまうことは仕方ないことだし、そんなことより数々の境遇から立ち上がったことに目を向けた方がいいと思いますけどね。
(まぁ犯罪は反省すべきですが)
モンスターを描くタッチがやっぱ良い
これまでは、トリコというマンガの全体的な感想だった訳ですが、ここからは具体的な部分でのトリコの個人的な感想をお伝えできればと。
やっぱり、トリコで一番印象的なのはモンスターの風貌。
これはやっぱり好きですね。
絶望的な強さのモンスター、強キャラを描くタッチ、おそらく島袋光年にここら辺を書かせたら右に出るものがいないと思っています。
それぐらい「キモい」「ヤバい」敵キャラを書くのがウマい。
例えばですけど、ワンピースのインペルダウン編で、監獄がヤバいって思いながらルフィが進んで行ったときに、様々なモンスターが出て来ますが、なんかタッチが可愛らしくて「これじゃない感」を抱いたのはぼくだけじゃないはず。
なんか恐怖のインペルダウンを表す敵キャラが、どうしても可愛く見えて、インペルダウン自体の怖さが薄れる印象を持っていました。
一方で、グルメ界編で出てくる八王のヤバさったらナイ。
これまで人間界で、いっても捕獲レベル100前後の敵ばかり相手にしていた訳です。
それが6000もの捕獲レベルの敵が現れたとき、その強さを絵のタッチで描くのは、かなり難しい。そう思っていました。
そんな中、八王の一匹「馬王」が出て来たときの、あの絶望感ったらハンパない。
見た瞬間に、「あっコイツはやべぇわ」って思える絵のタッチは流石としか言いようがありませんでした。
これはトリコの前作「たけし」のときでも全く同じ感想を持ちました。
悪魔が出て来た後、どーすんの?って一抹の不安を抱いていた後登場した最後の敵「バーバリアン」
悪魔って普通に考えて、一般的に多分最強の敵。
それをただの人間が上回るのは相当至難の業。
しかし、絵のタッチだけで「あっ。こりゃヤベェ奴だ」って思わせてしまうぐらい、敵キャラを書くのがウマいしまぶー。
この点はスゴいと思いましたね。
(トリコでも、アカシア復活時の姿はまさにバケモンでしたし、グルメ細胞のネオもハンパなくキモい姿でした。)
パワーバランスがウマい
もう一つトリコを読んだ感想で思ったことは、そのパワーバランスのウマさ。
グルメ界でのインフレがスゴい。なんてよく言われますが、それはバトルマンガの後半に行けば行くほど致し方ないことです。
それを言うならNARUTOの方が、後半のパワーバランスはひどかった。
あれだけ火影という存在に憧れを持っていたのに、NARUTOにすらチャクラが劣る「カカシ」が火影に推薦されるし、カカシは火影にすらなりたいと願ってなかった。
火影への憧れは何処へ?って感じです。
またNARUTOに至っては最終決戦で、螺旋丸1つで成り上がり、5影をも凌ぐ強さ。ってかあの5影揃っても1人の敵を倒せずじまい。
それに比べてトリコは、最後までウマく敵が強い理由、そしてトリコが倒せる理由、これが全うしていたように思います。
伏線としてでてきていたアカシアという神様的な奴の復活は、ラスボスとして強さを証明するには納得ですし、皆の力を受け取ったトリコがさらに強くなりアカシアを倒せた。
まぁバトルマンガのラストとしては横道なパターンですが、それでもトリコが強くなったのはうなずける理由があります。
人間界を制覇した後の壁として、八王の強さ、インパクトを残す部分もパワーバランスとしてウマいし、特段八王を倒すことはないので、それぞれが均衡したパワーバランスだったというまとまりを感想として持てる。
また最後に、三虎も活躍してくれましたし。
不自然な強さ、不自然な弱さ、あり得ない主人公補正、そんなのがトリコにはなかったし、納得できるインフレだったので、しまぶーのパワーバランスはぼくは好きでした。
終わりに
暇だったので、2日で全巻読み終わったトリコ。
前作のたけしを見ていたからこそ、何か感慨深いものを感じたマンガでした。
ちょっとロジカルな説明が多くて、読み辛さも多少ありましたが、それを上回る「キモさの絵」「飽きないパワーバランス」がありましたね。
もう完結したマンガで、連載中は見てなかったマンガでしたが、今読み返しても面白かったです。