快楽適応とは?ビジネスで生かす超実践マーケティング手法といっしょに実例を交えて解説!

今回はタイトルにある通りなんですが、以前メルマガ読者の方から「実践的なマーケティング手法があれば教えてください」ってな質問をもらっていたので、今回は”快楽適応”に関して解説していこうと思います。

後に詳しく解説していますが、この快楽適応というものを理解しているのと理解していないのとでは、ビジネス面で雲泥の差になって表れてきます。

それこそSNSなんかは、なぜあそこまでハマるのか。

なぜあそこまで膨大にユーザー数を増やすことができたのか。

まさしくそこには「快楽適応」を理解していたからといっても過言じゃありません。

この人間心理を理解し、欲求を刺激することによって、ドーパミンが放出され、サービスや商品のとりこにさせる。

多くの企業ではこの快楽適応が応用しているし、利用しているので、差別化を図る意味でも、この快楽適応走っておいた方がいい行動経済学の一つだと思いますね。

快楽適応とは

では早速。

そもそも快楽適応とはいったい何なのか。

この部分から解説していくと。

快楽適応とは、喜びや快楽といったものは、時間が計画していくごとに慣れていく(適応していく)ということを意味している心理学、行動経済学の用語です。

簡単にいってしまえば「慣れ」によって、快楽を感じづらくなったり、幸福感や多幸感が薄れていってしまうという状態を表しているのが、この快楽適応という言葉になります。

例えば恋愛なんかを想像してみると、まだ付き合っていない学生同士の関係で。

その時は連絡が来てくれるだけでうれしくって、学校で目が合うだけでドキドキしていたもの。

しかし、恋人になってくると連絡がおざなりになり、目が合ってもドキドキ感を感じなくなる。

結婚して夫婦にでもなれば、一緒にいることが当たり前で、異性であるという感覚さえない。

こういった事例は一言で言えば”慣れ”から引きおこるものですが、慣れてしまうことによって、最初はうれしいと感じていたことも、徐々に嬉しいと感じなくなっていってしまう。

まさにこれが快楽適応している状態だといえるわけです。

また快楽適応というのは、「幸福」というものだけに慣れてしまうのではありません。

「辛さ」や「不幸」においても、慣れてしまう人間の性質があったりします。

興味深い話で、インドのカースト制度の話があったりします。

インドではいまだに身分制度が存在していて、身分が低い人たちの生活は本当に苦しいモノ。

その最底辺の身分の人たちに、「そこから脱出させてあげる」という風に、好意で助けようとすると、そのインドの人は「辞めてくれ」という風に言うそうです。

それはなぜかというと、「今辛い状況であるのは、来世良い身分として生まれ変わるための修行だから、今この状況を抜け出してはいけない」と思っているから、現状を打開しようとは思わず、低い身分を全うしているということなんですね。

これは宗教的な問題や輪廻転生などの信仰などもありますが、大きなポイントになっているのは「辛さも慣れてしまう」ということであり、その慣れた状態がいい悪いではなく、現状維持を務めようとする生きものが人間だということ。

だから、そのカースト制度から脱出できたとしても、それをすることはせず、低い身分のまま一生を過ごしてしまうわけです。

つまり「不幸」においても快楽適応が引きおこるということ。

この部分は抑えておくといいかと思います。

ランダムで報酬を与える

じゃあ実際にビジネスシーンでどのようにこの快楽適応を活用していけばいいのか。

この部分を深堀して解説していくと。

そもそも「なぜ慣れてしまうのか?」ということを考えることが大切で。

慣れというのは「あることをすると、必ずもらえる報酬」であればあるほど、慣れていく傾向にあります。

逆に言うと、慣れないようにするためには「ランダムでの報酬」に切り替えてあげることが大切になるわけです。

恋人になれば、連絡は必ず帰ってくる。

付き合っていない片思いならば、連絡が返ってくるかわからない。

どちらがドキドキするのかは明確です。

実は、上記の現象は心理学的にも証明されていて。

モチベーションの心理学なんかにおいては、必ずもらえる報酬というのドーパミンなどの快楽物質は放出されないことが分かっています。

一方で、ランダムで報酬がもらえる場合、もらえたときには必ずドーパミンなどの快楽物質が放出されることが分かっています。

だからこそ、「片思いの人から返信が帰ってくるかわからない」という状況の中で、「連絡が来る=ランダムな報酬」となるから、”連絡を取っているだけで幸せ”という状況を生み出しているわけです。

つまり、快楽適応をさせずに、幸福度を維持したいのであれば、ランダム性を維持してあげることが大切になってくるということなんですね。

いいねの発明

じゃあ、このランダム性というのをビジネスシーンでは、どのように活用しているのか。

具体的な事例をもとに見ていくと。

いまのSNSでは、ほとんどのSNSで「いいね」の機能がついていると思います。

あれが発明されたのはFacebookが初めてですが、「いいね」というのはまさに「ランダムの報酬」そのものです。

投稿するまでは、どれぐらいいいねが押されるかわからない。

まさにランダム的要素なわけです。

その折、投稿してみると、予想以上にいいねが押される。

そのことにより、承認欲求が満たされ、快楽物質が放出される。

その興奮を得たいから、さらに投稿を繰り返す。

もし仮に、SNSに投稿して「必ず100いいねもらえる」という風に報酬が決まっていたらどうでしょう。

どんな工夫をしても、どんなに適当に上げても、100いいねから変わらないので、”慣れ”てしまい、まったく興奮しなくなるでしょう。

「どれぐらいいいねがもらえるかわからない」というランダム性が、報酬となり、SNSへの依存をもたらしているわけです。

Facebookがいいねを発明するまで、未熟だったSNSというのは「なにをユーザーに報酬として与えればいいのか?」ということを見つけられていませんでした。

SNSとは、投稿する人がいればいるほど盛り上がっていくプラットフォームです。

いいねが発明されるまで、お金という分かりやすい報酬などを駆使してユーザーに投稿させるようにするしかなかった。

しかし、ユーザー同士が承認欲求をくすぐり、快楽を与える相互関係を生み出す”いいね”を開発したことで、爆発的に広がっていったわけです。

いいねだけがあれば、ユーザーに金銭的なメリットを与えなくても、勝手に盛り上がってくれるので運営側からすればそれほどいいことはありません。

そして「いくつもらえるかわからない」といういいね争奪戦が、まさにランダム性を帯びているため、快楽適応をかわし、いつまでも興奮と快楽をもたらしてくれるというものになっているのがSNSなわけです。

これがSNSが悪魔的と言われるゆえんだったりするわけです。

更新頻度

もう一つ「ランダム性」をうまく活用しているSNSの事例を覗いていくと、更新頻度があげられます。

多くの人は、SNSを1日1回しか見ないってことはないと思います。

1日何回もSNSを開き、発信やつぶやき、投稿なんかをチェックしていると思います。

なぜ1日に何回もチェックしているのかというと、SNSを開くごとに「新しい投稿」があるからです。

「新しい情報を得た」という報酬があるからこそ、1日に何回もSNSを開いてしまうわけです。

インスタグラムで友人が結婚式の投稿をしていた。

Xでは、好きなアーティストが気になる発信をしている。

このように、新しい情報が次から次に変わっていくため、「開くたびにランダムな興奮を得られる」ようにSNSは設計されているわけです。

これがもし毎日13時にしか情報が更新されない、という風になっていたらどうでしょう。

15時に開く意味はないし、20時にSNSを見る必要もない。

つまり、ランダムに更新されているということが快楽適応を防ぎ、新鮮な快楽を提供しているということなんですね。

その証拠に。

フォロワーが投稿をしていない(=更新する新しい情報がない)という状態であっても、表示するアカウントや投稿をずらしたりすることで、「新しい情報が表示させているように見せかける」という仕組みを導入していたりします。

そうすることで「あれ?新しい投稿があるのかな?」と気になり、SNSを見入ってしまう。

このような仕掛けがわんさかあったりします。

なので、一度注視してみてみるのも勉強になると思います。

要するに、新しい情報を得られたという体験は、快楽という報酬になりえるということ。

そのため、新しい情報があるかもしれないという状況を作り出し、ランダムで新しい情報を与える、あるいはあるように演出することで、快楽適応を防いで、新鮮な快楽を届けているということなんですね。

適度な難易度

次に紹介するのは、「適度な難易度」です。

快楽適応を防ぐためには、難易度の設定がすごく大切になってきます。

というのも、難易度が簡単すぎると、快楽を全く感じなくなってしまうためです。

例えば、RPG系のゲームなんかを想像してもらうとわかりやすいと思います。

最初は弱い敵を倒していきながら、徐々に強い敵を倒せるようになっていく。

その過程があるからこそ、ゲームは楽しめるわけです。

ただ、そうじゃなく。

ポケモンのサトシが100LVになっているのに、マサラタウンにいて5LVのコラッタとしか戦えなかったら、そのゲームは全く楽しくない。

つまり、適度な難易度があるからこそ、「快楽」というものにつながっているわけですね。

それがすごく如実に表れているのは、iPhoneです。

iPhoneを初期のころから使っている人はわかると思いますが、ホーム画面をスワイプして、アプリを横に切り替えていくときに、「とっかかり」を感じると思います。

パッパッパとすぐに画面は切り替わらない。

すこしだけ「抵抗」を生み出し、切り替えるときのとっかかりを演出しています。

kindleなんかで読む「電子書籍」も全く同じで、ページを切り替えるのではなく、「ページをめくる」ように演出されている。

これは「抵抗」という難易度を作ることで、「ページや画面を切り替えて新しい情報を得る」という快楽を演出するために作られたモノです。

ガチャガチャがなんであそこまで人気なのか?っていう理由と全く同じです。

ガチャガチャは、「取っ手を回す」時にあえて、「抵抗」を残しています。

あれってよく考えれば、自動販売機のように、ボタンを押して、商品が落ちてくるというような設計にしてもいいはず。

しかし、あえて「アナログな取っ手部分」を残しているわけです。

要するにガチャガチャっていうのは、「回すことへのエンタメ感」が商品なんだってことなんですよね。

だから取っ手を残している。

そしてその取っ手から感じられるエンタメ感っていうのは「適度な抵抗」があるからこそ、感じられる楽しさであり、その楽しさの源泉というのは「適度な難易度」だということが言えるわけです。

つまり、快楽の適応を利用するためには、簡単にご褒美やメインディッシュを与えるのではなく、適度な難易度を設定し、その困難を乗り越えるご褒美として渡すことで、喜びを増大させることができるわけです。

サブスク

次に紹介するのは、サブスクです。

このサブスクにおいては、ちょっとトリッキーというか、応用的な使い方なので、その点は留意してほしいんですが。

快楽の適応っていうのは、簡単に言えば「快楽に慣れる生き物」という人間の心理状態を解説しているわけです。

そして、サブスクリプションサービスの一番のメリット、かつ利用者として一番恐ろしいのは「入っていることが当たり前」という状態を生み出すことです。

入っていることでメリットを享受できているかどうか?という審議さえ、させる暇を与えないっていうことですね。

「あれ?私このサービスは入ってたっけ?」という状態であれば、利用する割合もないわけなので、サービス事業者としては一番うれしいわけです。

携帯とかを契約するときに、意味わかんないオプションに加入させられたことがあると思いますが、半年間全く使っていないサービスに料金を払っていたなんていう経験をした人も多いと思います。

あれが一番事業者としては望ましい状態なわけです。

要するに「当たり前」の状態に持っていくのが、サブスクのゴールだということです。

その上で「快楽の適応」というのは、快楽に慣れてしまうということなので、サブスクと相性がいいんですね。

最初に大きなメリットを提示して起き、サブスクに参加してもらう。

利用者としては、そのサービスの快楽や喜びというのは徐々に薄れていく。

喜びは薄れるが、利用するのが「当たり前」の状態になっているので、なんとなく継続を続けていってしまう。

これがダラダラとサブスクを入り続けてしまう人の心理です。

逆にサブスク事業者は「このサブスク入っている意味あったっけ?」と考えさせないことが一番いいわけです。

だから、解約方法もめんどくさいし、いざ解約しようとしたときに「ほんとにいいですか?」と何度も確認させられる。

そもそもの快楽の適応という心理状態と、「何もすることなく課金が続く」というサブスクリプションというのは、めちゃくちゃ相性がいいサービスなんですね。

だからこそ、行動経済学が発展し、ここまでサブスクリプションサービスが広まっていったのかもしれません。

自身のビジネスで応用するための2つのポイント

ここまでで、身の回りのサービスや商品にどのように快楽適応が活用されているのか?という部分を解説していきました。

となると、気になるのは「どのようにビジネスで応用していけばいいのか?」という部分。

自分自身でビジネスやらサービスを展開している場合の応用方法を解説していこうと思います。

この快楽適応を活用するために、大切になってくるポイントは2つで「快楽に慣れさせない」ということと、「快楽に慣れさせる」というこの2つを企業やサービスで活用されているポイントです。

さきほどから解説しているSNSなんかを見てみると、すごくわかりやすいと思います。

SNSの「いいね」という機能は、人間の承認欲求に働きかけ、快楽を与えています。

そして上記で解説した通りですが、「ランダム性」があるからこそ、その快楽も高まっていく。

毎回同じ報酬しかもらえないのであれば、まったく快楽につながらないわけなので、ランダム性の報酬をところどころにちりばめているわけです。

つまりこれは「快楽に慣れさせない」ことへの工夫だということが見て取れるわけです。

その一方で、サブスクリプションサービスなどは「継続率」が重要なファクターになってきます。

サブスクサービスを継続して利用してもらう。

そのために、「快楽に慣れさせる」ことが重要になってくるわけです。

今ではほとんどの人がサブスクに登録していると思いますが、大半の人が「あれ?このサブスクに入っていたっけ?」と加入していることすら忘れているサービスがあったりします。

サブスクリプションにおいて、こうしたお客が一番いい良質な顧客だったりします。

要するに、加入していることすら忘れて、コンテンツを垂れ流ししている状態ですね。

これこそがまさに「快楽に慣れている状態」になっているということであり、快楽適応を120%ビジネスに活用しているケースだといえるわけです。

つまり、自分自身がビジネスに快楽適応を応用するとしたら、考えるべきポイントは2つで。

  • いかに快楽に慣れさせない工夫をするか
  • いかに快楽に慣れるための工夫をするか

この2つのポイントを見極めることが大切になってくるということが言えるわけです。

仮に、SNSのような「頻度高くサービスを利用してほしい」というビジネスモデルを設計している時。

このようなビジネスモデルは、従量課金モデルに近く、使ってもらえば使ってもらえるほど顧客単価が上がるので、快楽に慣れないための工夫が必要になるわけです。

そうすると、必要になってくるのは「ランダム性」であったり、「承認欲求へのアプローチ」であったり、「何度も訪問したくなる容易な仕掛け」であったりするわけです。

一方でサブスクリプションサービスなどの、「頻度高くサービスを利用しなくても顧客単価は変わらない」というケースの場合は、快楽に慣れさせる=サービスを利用するのが当たり前の状態を作ることが大切になってきます。

そうなった場合は、快楽を与え続けるというよりかは「慣れ」という部分にフォーカスした方がメリットは大きいので、インフラとしての機能を補填した方が効果的だったりします。

具体的には、「○○がないとサービスが周らない」というようなサブスクモデルを開発したり、「半年間継続して効果が出る」というような長期的な結果にコミットするサービスであったり。

こうしたサブスクモデルだと、快楽というより「あることが当たり前」「ないと困る」という欲求に答えられるので、快楽適応をうまく活用しているといえるでしょう。

まとめ

ちょっと長くなったので、最後にまとめておくと。

快楽の適応とは、心理学用語で「人間はどんな快楽であろうと、慣れてしまう」ということを表した用語である。

どんな快楽であれ、それに慣れてしまい、幸福を感じることはなくなっていってしまう(あるいは薄れていってしまう)ため、ビジネスで応用するときは「そのための工夫」が必要になる。

逆に、企業やサービス事業者というのは、快楽を操り、サービスに依存してもらうために、様々な工夫をしてサービスを利用してもらうための努力を行っている。

  1. ランダム性
  2. 承認欲求
  3. 難易度

一つ一つ改めてみていくと、快楽は慣れるので”ランダム性”を用いることが大切。

いいねなどの開発からSNSは、承認欲求というお金のかからない報酬を快楽として与えている。

適切な難易度を設定することにより、乗り越えたときの喜びを増大させる仕組みを取り入れている。

これらを意識することによって、SNSはここまで発展していったといえるし、人間の心理を120%理解した上で、サービスを開発していったことがうかがえる。

また、自分自身のビジネスやサービスに応用する際には、以下の2つのポイントを見極めることが大切になってくる。

  • いかに快楽に慣れさせない工夫をするか
  • いかに快楽に慣れるための工夫をするか

自身のビジネスモデルが、従量課金モデルに近く、使ってもらえば使ってもらえるほど顧客単価が上がるのであれば、快楽に慣れさせないための工夫が必要になるため、重要になってくるのは「ランダム性」であったり、「承認欲求へのアプローチ」であったり、「何度も訪問したくなる容易な仕掛け」などになる。

一方頻度高くサービスを利用しなくても顧客単価は変わらない」というケースの場合は、快楽に慣れさせる=サービスを利用するのが当たり前の状態を作ることが大切になってくるため、「あることが当たり前」「ないと困る」というベクトルで快楽適応をうまく活用するといい。

まとめるとこんな感じですね。

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