今回はタイトルにある通りなんですが、以前メルマガ読者の方から「マーケティングなどの具体的な手法があれば教えてください」ってな質問をもらっていたので、今回は解釈レベル理論についてちょっと伝えていこうかなと思います。
正直、この解釈レベル理論を知るのと知らないのとだと、かなり大きくビジネス的な損失が高くなります。
例えるなら、マッサージなんかがその典型で。
腰が痛いのに、ずっと肩をマッサージしていたり。
肩が凝っているのに、ずっと下半身を指圧されていたり。
こんな感じでポイントがずれてしまうと、全くもって効き目がないわけです。
解釈レベル理論も全く同じで。
消費者の心理が、時間などによって大きく変わってくるので、その変化に気づけなければ「肩が凝っているなら腰をマッサージしますよ」というようにクロージングしているようなものになってしまう。
そんなことがないように、この解釈レベル理論をマスターして、マーケティングに生かしていってほしいなと思うので解説していきます。
解釈レベル理論とは
では早速。
解釈レベル理論とはいったい何なのか。
解釈レベル理論とは、消費者の心理が時間によって変化するということを意味していて、よくある事例は目の前のことは「具体的」に考え、遠くのことは「抽象的」に考える思考のことを指しています。
面白い事例を紹介すると、旅行会社のパンフレットなんかがその例として分かりやすくって。
旅行会社の「ハワイ旅行」という見出しにおいて。
「もう明日に迫ったハワイ旅行」という急なプランだった場合は「具体的な日程」が好まれます。
朝9時に空港に到着し、10時のフライトで羽田を出発。
現地に18時に到着し、ホテルで夕食。etc..
というように、時間がさし攻めると「本当に可能なのか?」という疑問が沸き起こり、その日程を具体的に知りたくなるのが、解釈レベル理論から理解できます。
ただ、当然ですが「こんな具体的なプラン」というのは、あまり旅行代理店のパンフレットで見ません。
ほとんどが「ハワイの綺麗な海」であったり、「きれいな白浜」が映し出されていると思います。
それもそのはずで、旅行というのは基本的には数か月先の話です。
解釈レベル理論の面白さはここにあって。
「時間が先であればあるほど、具体的なことよりも、抽象的なものを好む心理状態」を表しているんですね。
つまり、数か月先の旅行であればあるほど、どの便で何時に空港について、どのホテルに泊まってなんていう具体的なプランはどうでもよく。
「きれいな海。サラサラな砂浜。エモーショナルなサンセット」
こうした抽象的、かつ刺激的なものを求めるというのが、解釈レベル理論なんですね。
旅行とは、基本数か月先だからこそ、抽象的な「ハワイの写真」を掲載しているということ。
このように企業では、解釈レベル理論に乗っ取って、消費者が「どのような欲求を抱いているのか」を理解し、その欲求を刺激するような情報を提供しているわけです。
だからこそ、ビジネスを仕掛けるマーケターであったりは、消費者がどのような欲求を抱いているのかを知る必要があるわけです。
解釈レベル理論を使いこなすための秘訣1
じゃあ次に。
どのようにしたら、この解釈レベル理論を活用し、実行することが出来るのか。
まず一つ目に大切になってくるのは「消費者がいつ欲しているのか」という時間間隔を見極めること。
これが一つ目に大切になってくるポイントです。
人間の心理として、目の前のことであればあるほど「具体的」で、先のことであればあるほど「抽象的」な概念しか考えられなくなります。
目の前のことであればあるほど「具体的」で、先のことであればあるほど「抽象的」な概念しか考えられなくなるということは、それらの情報以外シャットアウトしてしまうということ。
例えばですけど、「3年後にヨーロッパへ海外旅行しよう」っていう約束は覚えられますよね。
大学の卒業旅行なんかを例に考えると、さほど難しくないと思います。
しかし、「じゃあ3年後の19時に成田空港に集まろうね」ってな予定を覚えてられるか?っていうと全くもって不可能に近いです。
こんな感じで、人間というのは先であればあるほど、具体的なことを覚えておくのが苦手な生きものなんですね。
これは「モチベーション」の理論なんかでも応用が利くし、心当たりがある人も多いと思います。
モチベーションとして「将来○○になりたい」って考えると、モチベーションがぐっとわいてくる。
でも「将来○○になりたい」って思っただけだと、数日して忘れてしまう。
それは「将来○○になるために、じゃあ今日なにをしたらいいのか?」という具体的なアクションにまで移っていないからです。
どちらが重要なのか?ということではなく、「どのタイミングなのか」という時間間隔を知ることが大切だということです。
何度も言うように、目の前のことであれば「具体的に」
目先のことじゃないのであれば「抽象的に」
という時間間隔をとらえることが大切だということですね。
あなたの商品やサービスにおいても重要で。
その商品やサービスが、目先の問題をクリアしている、あるいはクリアするのであれば「具体的な」説明が必要になってくる。
でもそうじゃなく、先の問題をクリアするものなのであれば、「抽象的な」説明が必要になってくるわけです。
例えば、肌がキレイになるという即効性の高い美容品だった場合。
これは「なぜその商品がキレイにすることが出来るのか?」という具体的な説明が求められるでしょう。
逆に学習塾のように、数年後の問題(ここでは受験ですね)をクリアするためのサービスや商品だった場合、「その大学に合格したら訪れる未来」を想起させるように訴えていく。
まさにハワイの綺麗なビーチやサンセット、海をカタログに乗せるかの如くです。
このように「自分自身のサービスや商品の時間軸が先なのか、後なのか」を知るのが、解釈レベル理論を応用するための一つ目のステップとなるわけですね。
解釈レベル理論を使いこなすための秘訣2
自分自身のサービスや商品の時間軸を理解したら、その次にやるべきことは「説得」になってきます。
先ほどまで伝えていたことっていうのは「人間の欲求に刺さるモノを分ける」ということでした。
目の前のことであれば、具体的なモノが欲求に刺さり、目先のことじゃないのであれば抽象的なモノが刺さる。
この人間心理を突いたのが解釈レベル理論となるわけです。
そして1つ目のステップで、「商品やサービスの時間軸」を明確にしてきた。
そうなった後にすべきなのが「欲求に突き刺さっているか」ということの精査なわけです。
言い換えると「説得できているのか」ということですね。
例えばですけど、「3か月で東大に受からせます」という風に打ち出した広告があったとして。
3か月と言えば、受験の中では「目先のこと」という短期に当たるので「具体的な欲求」の方にアプローチした方が刺さるわけですが「どのようにして東大に行くことが出来るのか?」に納得できなければ、サービスに申し込んでもらうことはないわけです。
つまりクロージングに失敗していて、説得できていないということになるわけですね。
また逆に、「北海道旅行」というようなプランを押し出していて、ビーチやサンセットを写真を掲載していた場合。
旅行ということで、時間軸は「将来だな」と推測し、旅行を想起させるビーチやサンセットの写真を掲載しているわけですが、北側にある北海道で果たして「サンセット」を期待している人はいるのか。
はたまた北海道までいって、海水浴をしたいと思っている人はどれぐらいいるのか。
どちらかと言えば、海鮮料理だったり、ウィンタースポーツであったり、富良野などの綺麗な花などの方が魅力度は高いといえるわけです。
これも「説得」に失敗しているということにつながる訳ですね。
またここでもう一つ押さえておいてほしいのは「将来の欲求に指す」からと言って、「申し込みが将来である」ということではないことなんですよね。
旅行なんかはその典型ですが、数か月先の旅行に対して、今支払いをすることが往々にしてあります。
つまり将来の欲求に対して「今説得する」ということが起こりえるわけですね。
とすると、当然説得の重要性は高まるわけで、「欲求に対して、応えられているのか」という審議が入ってくるわけです。
時間軸という的を得て、そこに説得する矢を放つ。
こんなイメージで取り掛かっていくと良いと思います。
それをより理解させてくれるのが、解釈レベル理論ということになるわけですね。
解釈レベル理論を用いた実例1
じゃあ、実際のマーケティングではどのように解釈レベル理論が活用されているのか。
実際の実例を見ながら理解していった方が、理解が深まると思うので、その実例を紹介していこうと思います。
まず一つ目は「ライザップ」などのダイエット商品サービスを考えてみると。
あの有目なCMなんかが印象的だと思いますが、ダイエットに成功した人のビフォーアフターがぐるぐると回りながら、視覚的にわかるようになっています。
これは当然抽象的なイメージを売りにした戦略マーケティングです。
一見するとダイエットと聞くと「コンプレックス」に当たるので、時間軸で言えば短期的であり、短期的であるなら「具体的な手順」を伝えた方が効果的だと思えるかもしれません。
しかし、ダイエットに取り組んだことがある人なら「数か月かけてダイエットする」ということが常識であり、1か月で5キロマイナスっていうような文言は誇大広告であることが分かると思います。
整形や脂肪吸引などの治療とは違い、根気良く続けて健康的に痩せるということを念頭に置いていくと「長期的なプラン」が必要なことは、視聴者にとっても明確だということですね。
つまり、ダイエットというのは「長期的」な時間軸にあるので、「抽象的なイメージ」を見せることによって、その理想的なボディを目指したいという欲求に指しているわけです。
まさにこれは数か月後にハワイ旅行に行きたいという欲求から、きれいな砂浜のビーチを写真で見せるというやり方と全く同じなわけですね。
要するに「半年後にこの肉体を目指しませんか?」という訴求メッセージが隠されているわけです。
先ほどのステップ1の時間軸を明確にするということで言えば、ダイエットというのは「長期的=目先のすぐに手に入るようなものではない」という時間軸ということ。
そしてステップ2の説得という部分では「パーソナルトレーニングで徹底的に個別指導」ということによって説得力を高めているということが見えてくるわけですね。
このように大手企業もこの解釈レベル理論を取り入れてマーケティングを実践していることが見えてくるわけです。
解釈レベル理論を用いた実例2
次に紹介するのは、Google pixelなどのスマートフォンを紹介していくと。
Google pixelとはアンドロイドのスマートフォンなわけですが、あるときのCMでは「スマートフォンの乗り換えはケーブルを指すだけ」というようなCMを打っていたことがあります。
この乗り換えるスマートフォンというのは、当然「iPhone」を指しています。
世界的なシェアで言えば、androidの方が圧倒的にシェアがあるわけですが、実はアメリカと日本ではアップルiPhoneのシェアが圧倒的に高くなっています。
つまりこのGoogle pixelのターゲティングというのが「iPhoneを利用している人」をターゲティングにしているわけですね。
その上で、スマートフォンというもの自体の時間軸を考えてみると、当然のことながら「短期」です。
買ったらその日のうちに手元に来たうえで、その人のうちに使うのがスマートフォン。
だからこそ、「乗り換えはケーブルを指すだけ」というように具体的な手順をもって「乗り換えるのは簡単だよ」という風に訴求しているわけです。
当然ユーザーは「のりかえがめんどくさそう」というイメージを持っています。
iPhoneには、icloudにデータを保存しているし、電話帳やら画像フォルダやらに、色々とデータを蓄積させているわけです。
スマホを乗り換えるときに、一番ネックになるのは「データ」なわけですから、それをケーブル一本で乗り換えが簡単にできるというのは、かなり安心感を持たせることにつながる訳です。
つまり、ステップ1の時間軸は「短期」であり、短期であるからこそ「手順」を説明する必要がある。
その手順として、ステップ2の説得としては「ケーブルを指すだけ」という風に訴えることで、そこに説得力と訴求力を持たせ、iPhoneからの乗り換えを促している、ということが言えるわけですね。
これも解釈レベル理論を用いて、「ユーザーが求めているもの」を詳細に理解した上で、売っている戦略だということが読み取れるかと思います。
解釈レベル理論を用いた実例3
次に紹介するのは「シャンプー」のCMです。
シャンプーってどんなCM?って聞くと、大半の人が同じイメージを抱くと思います。
「黒髪ロングの綺麗な女性が、後ろ髪を揺らして、ツヤのある髪をなびかせる」
大体このCMでイメージは統一されていると思います。
「ツヤのある髪」は誰しもの憧れなわけで、反対にパサパサで切れ毛があるような髪から脱却したいと思っているわけですね。
じゃあこのシャンプーなどの消費者の欲求っていうのは「短期的か長期的か」というのを見ていくと、当然ながら「長期的」です。
短期的にすぐによくなるっていうことはシャンプーには無理で、それこそ美容室などで縮毛矯正とかを行わないとできないわけです。
美容師の人が言っていましたが、シャンプーやコンディショナーなどが髪のケアだとすると、縮毛矯正というのは「髪の整形」という風に言っていたんですが、芯をとらえた表現だと思います。
そしてシャンプーなどには整形などの即効性はないわけですから、「抽象的なイメージ」を与えることを戦略として取っているわけです。
だから、CMなどを通してキレイな黒髪ロングの女性が、後ろ髪をなびかせているというCMになり、「いづれ私もこんなきれいなロングヘアーになりたいな」という印象を抱かせているわけです。
ステップ1の時間軸で言えば「長期」であり、長期であるからこそ抽象的なイメージを優先させている。
そしてステップ2における説得力を持たせているのは、シャンプーの中に配合されている成分であり、長期的な「ケア」により実現できるということで説得力を持たせるようにしているわけですね。
まとめ
ちょっと長くなったので最後にまとめておくと。
解釈レベル理論とは、消費者が達成したい目標が短期であるか長期であるかによって、訴求する内容を変更させるなどをした消費者心理を理解するための理論である。
消費者が短期的な悩みを解決したい場合は「具体的な手順」をもって訴求すると効果的であり、長期的な場合は「抽象的なイメージ」をもって訴求すると効果的である。
なぜなら人間というのは、モチベーション同様「目の前のことには具体的な手順」がなければモチベーションがわかず、先のことにおいては具体的な内容は覚えておけないため、目の前の欲求に対しては具体的な手順が公的だといえるため。
逆に長期的な欲求に訴求する際には、具体的な手順を示しても効果は薄く、抽象的で、それを連想させるイメージを訴求した方が効果的となる。
旅行などでは、日程が差し迫った旅行であるならば、具体的なスケジュールを訴求した方が成約率が高くなり、数か月先の旅行では「旅行先のイメージ写真」などで訴求した方が成約率が高まるといえる。
そして、この解釈レベル理論を活用するには2つの大切な要素がある。
2つの要素とは以下の通りである。
- ステップ1:時間軸を明確にする
- ステップ2:説得力を高める
これらの要点を抑え、自分自身のサービスや商品に応用すると、消費者に対して効果的に刺さりやすいサービスや商品を提供できるようになる。
こんな感じで、僕のメルマガ読者限定で質問に答えたりしているので、聞いてみたいことや質問がある方はメルマガ登録して質問してみてください。
物理的に個別に回答することは出来ませんが、こんな感じで多い質問にはまとめて答えていければと思います。
ぜひ参考にどうぞ。