今回はタイトルにある通り。
「ショックな出来事から立ち直るための方法」として面白いことを知ったので、それをシェアしておこうと思います。
結論から言うと、「認知的再評価を行い、イヤな記憶を思い出すこと」が立ち直るためには効果的だということが分かっています。
ちょっとまだ認知的再評価を含め、よくわからない部分もあると思うので、詳しく解説していきます。
別れて間もない被験者を26人集めた結果
どういうことか具体的に説明するには、その根拠から伝えていくとわかりやすいと思うので解説していくと。
これはミズーリ大学が2008年に行った研究がもとになっていて。
この論文では別れたばかりの人たち26人を被験者として集め、別れたての「恋人の写真」を被験者に見せていきます。
(別れたばかりの人に元恋人の写真を見せるって、傷口に塩を塗るような行為に等しいので、研究者ってえぐいことやるなって感じがしますが。)
その元恋人の写真を見てもらいながらそれぞれのアクションを3つのグループに分けて取ってもらいました。
- ポジティブな印象に置き換える
- ネガティブな記憶を思い出す
- 他のことに気をそらす
この3つのアクションをそれぞれのグループの被験者に行ってもらいました。
ポジティブな印象に置き換えるというのは、よく男同士の会話でわかれたばかりの人を励ます際に「女なんて星の数ほどいるよ」と言い励ますことがありますが、そんなイメージです。
「別れたことで自由な時間が増えた」「運命の相手じゃないと知れた」「もっといい人が現れるきっかけをもらえた」
このように、「恋人との別れ」をポジティブな意味づけをしたのが1番のグループでした。
2つ目の「ネガティブな記憶を思い出す」というのは、例えば「元恋人の嫌だったところ」や「直してほしかったところ」など、ケンカになった原因や相手の嫌だったところなどのネガティブなシーンを思い出すのがこのグループ。
そして3つ目の他のことを考えるというのは、「今日の夜ご飯何食べよう」だとか、「今日テレビで面白い番組あるカナ」といったように、別れたこととは全く関係のないことを思い出してもらいます。
このようにして傷心中の被験者に対して「元恋人の写真」を見てもらいながら、
- ポジティブな印象に置き換える
- ネガティブな記憶を思い出す
- 他のことに気をそらす
それぞれの方法で忘れてもらうようにしたのが、2008年にミズーリ大学が行った研究だということですね。
そして、その後被験者に対してアンケートを行い「どれぐらい元恋人との思いや未練を断ち切れたか」といったことを調査していったところ、2番の「ネガティブな記憶を思い出す」としたグループが一番未練を断ち切れている割合が高いことが判明しました。
いわば失恋という「大きなショック」であり出来事に対して、それを乗り越えられる割合が高かった、ということになるわけです。
なぜネガティブな記憶を思い出すと未練を断ち切れるのか
ではなぜ、ネガティブな記憶を思い出すと未練を断ち切れるのか。
その理由を解説していくと。
これは「認知的再評価」ということが関わっているとされています。
この認知的再評価というのを分かりやすく説明すると、「ヤンキーや不良が良いことをすると良い人だと思いこみやすい」というのがあると思います。
いわばギャップですね。
ヤンキーや不良がおばあちゃんに電車で席を譲っていたら普通の人より「良い人だ」と思いますし、落とし物を届けていたら「律儀な人」と思うでしょう。
これはヤンキーという第一印象が悪かった状態から、「席を譲る」「財布を届ける」という良い行いをしたことで、脳内で再評価をし、そのギャップの大きさから「より良い人に感じる」ということが起こっているわけです。
これがいわゆる認知的再評価。
ヤンキーが席を譲ると覚えておけばいいです。
これが恋愛や失恋などショックな出来事とどう関係しているのかといえば。
僕ら人間は「過去を美化する生き物」です。
イヤな記憶や辛い過去を消去していくので、必然的に過去を美化していく傾向にあります。
失恋などのショックな出来事が起こると、「本来あったはずの相手の不満や嫌な部分」などを忘れ、美しい記憶として残していく。
このような状態になっていくわけです。だからこそ余計忘れられず乗り越えられない。
「初恋の人を忘れられない」といったのはまさにです。
ただ、初恋の人しかり、幼いころに恋をした幼稚園の先生しかり、現実にはそこまで可愛くないorカッコ良くなったかりした経験ってないですか?
これは先ほど伝えた通り過去を美化している顕著な例です。
話を戻して。
ミズーリ大学の「ネガティブな記憶を思い出したグループ」が一番失恋から立ち直るのが早かったのは、「美化した過去をネガティブな記憶を思い出すことで、認知的再評価をした」ことによって立ち直ることが出来た、といえるわけです。
初恋の人の今の写真を見る。
恋人と旅行の写真を見て、実はケンカしたときの記憶を思い出す。
浮気された最低の性格だったことを思い出す。
こうして「美化された状態の完璧だった理想像」を現実に引き戻すことによって、再評価がなされ理想像を打ち崩すことが出来るため、「過去にとらわれることがなくなり乗り越えることが出来るようになった」ということが言えるわけです。
だから、元恋人の写真とかは「すぐに捨てるといい」ということをよく聞きますし、捨てれない人は女々しいといわれたりしますが、実は科学的には捨てないほうが得、ということが言えるわけですね。
むしろ写真を見て、その時あったネガティブな記憶を思い出した方が、乗り越えるスピードを高めることにつながるので、乗り越えた後に捨てたほうが効率的といえるわけです。
深い悲しみやショックな出来事から早く立ち直るには
では最後に。
この2008年のミズーリ大学の論文をどう応用していけばいいのか、ということを解説しておくと。
シンプルにそのままの解釈で「写真を見て、ネガティブな記憶を思い出す」という方法でも使えると思います。
楽しかった旅行でも、充実してた恋人ライフであっても、必ず「ネガティブな側面」というのは存在します。
相手の嫌な部分が見えた。意外に短気だったことが判明した。定員さんにきつい口調だった、などなど。
楽しい状況や充実感がある中でも、ストレスに感じた部分や不平不満を抱いた瞬間というのは誰しもがある中で。
記憶は嫌な思い出などを消去しがちなので、忘れてしまっているところを思い出し、フラットな過去を呼び戻していく。
そうすることで、完璧だった過去というものを認知的再評価することで、立ち直りやすくなります。
さらにこのミズーリ大学の方法を発展させると。
この記事でも書いていますが、「書き出す」ということは心理療法でも使われている手法で、気持ちの整理やストレス減少に効果があることが分かっています。
なので、「ネガティブな記憶を思い出し、紙に書きだす」ということをするとより立ち直りやすくなることが推測できます。
さらにさらに。
この「書き出す」という時間帯において、夜に行うと「記憶に定着しやすい」傾向にあるため、美化された偽りの記憶を塗り替えるには適した時間だといえます。
要は、夜の寝る前の時間帯のほうが認知的再評価を行いやすいということが言えるわけですね。
つまり、「元恋人の写真を見てネガティブな記憶を思い出し、書き出すということを、夜の寝る前に行う」というのが、一番ベストな対策だといえるでしょう。
まとめ
少し長くなったので、最後にまとめておくと。
失恋などのショックな出来事から最速で立ち直る方法は「元恋人の写真を見てネガティブな記憶を思い出し、書き出すということを、夜の寝る前に行うこと」
それは過去は嫌な記憶などを忘れ、本来あったネガティブな記憶を忘れる傾向にあるため。
この本来あったネガティブな記憶を思い出すことによって、認知的再評価が起こり、「正しい過去」としての記憶にすることが出来るため、乗り越えやすくなる。
そのため、「ポジションに置き換える」や「ほかのことを考える」といった対策をとった被験者よりも「ネガティブな記憶を思い出す」といったアクションを撮った被験者が、恋人からの失恋に立ち直るスピードが速い傾向にあった。
ということが言えるわけですね。
今現在ショックな出来事や失恋などの辛い過去にとらわれているのであれば、試してみるといいと思います。
ぜひ参考にどうぞ。