今回はタイトルにある通りなんですが、埋没コストに関して解説していこうと思います。
多くの人が時間やお金、労力をかけたものを中々手放すことができない。
それは時間やお金をかけたのだから、もったいないという感情を持ってしまう。
こうした「幻想の価値」に騙されるのではなく、瞬時に辞める辞めないをきっぱりと見極め、意思決定をするための方法を解説していこうと思います。
埋没コストとは
では早速。
埋没コストとはいったい何なのか。
この部分から解説していくと。
埋没コストというのは、お金や時間、労力をかけたものに対して執着し、中々手放すことができない現象のことを指します。
よく言われるのが「株式投資における損切」なんかが、この埋没コストの例として挙げられます。
例えば、1万円でAという株を買ったとする。
それが8000円にまで下げり、2000円の損知が出ちゃったとする。
はた目から見ると、「2000円損したんだから売りなよ」と思うわけだが、当人は中々売ることができない。
それは「お金を出して買ったのだから」という埋没コストが発生しており、その人にとっては”価値あるもの”に変わっていってしまうから。
例えばだけど、クローゼットの中に着なくなった洋服がいくつもあると思います。
じゃあその着なくなった洋服を、いざ捨てられるか?と聞くと、ほとんどの人が捨てられないと答えてしまう。
それはわざわざお金を出して買ってしまったものだから、タダで捨てるのはもったいないと思い込んでしまうからです。
ただ現実に考えてみると、誰もその時代遅れの服を着ようとは思わないから、タダ以上の価値はない。
また、クローゼットと言えどスペースは有限であり、家の家賃を払っているのであれば、服を管理するコストというのもかかっているのが現状。
それであれば「着ない服を持っておく」ということの方が、合理的に考えればムダで損している行為に当たる。
でもなかなか物を捨てることができない。
まさに先ほどの株の例と同じで「2000円下がったんだから売りなよ」と言われても当人はなかなか売れない(着ない服でも捨てれない)ということが起こるわけです。
これが埋没コストということになります。
同じ金額を出して買いなおすか
じゃあ、この埋没コストに騙されず、合理的に物事を判断するにはどうしたらいいのか。
この場合、ケースバイケースで考えることがものすごく大切になってくる。
先ほどの「着ない洋服が捨てられない」というケースにおいて大切になってくるのは「同じ金額を出して買いなおすか?」という質問を投げかけるというのが、効果的だと思います。
別に捨てなくても損はしない。
そう思ってなかなか捨てられないわけですが、先ほども伝えた通りスペースは有限であり、保管しておくにも賃貸コストがかかっているのが現状。
さらに言えば、服の枚数が増えることにより、選択肢が増えるので、「何を着ようか?」という時間まで奪われる結果につながります。
だからこそ、スティーブジョブズは同じ服を着ているし、オバマ元大統領は毎日着る服を決めるコーディネート専用の人を雇っていたりする。
出来る人ほど、着る服といったある種どうでもいい決断を、オートマティックにすることにより、本当に大切な意思決定に注力しているわけです。
こう考えると、どれだけ「着る服に迷う」ことが無駄であり、機会損失が大きいのか想像に難しくないと思います。
だからこそ、服を含めて断捨離することが大切なわけですが、ポイントになるのは「その洋服を同じ金額出して買うか?」という質問。
この質問に対してイエスであれば、その服は重要なので持っておいていい。
逆に、同じ金額を出しても買わないというのであれば、今あなたにとってその服というのは必要ない服だということ。
だったら、さっさと捨てて着る服だけを残した方がはるかにいい。
そうした方が身軽になるし、ものが少ない、いわゆるミニマリストの方が創造性が高いことが知られています。
なので、ぜひ断捨離をすることをおすすめします。
制限を設ける
もう一つは制限を設けるという方法です。
この制限というのは、年齢、時間、締め切り、などなど。
色んな方法として応用が効くやり方です。
ここではひとつ”年齢”という制限を設けて、埋没コストにとらわれないようにした人の話をしようと思います。
僕の知り合いのある方は、一つの夢をというか目標を持っていたんですね。
でもその目標っていうのは、結構ハードルが高い夢で、なかなか倍率が高いことでも有名でした。
だから、最初はそれだけで生活できるようなものじゃないので、普通の会社に就職して、空いた時間にその夢を追うという生活をしてたんですね。
それが何年も何年も続いていくわけですが、この「費やした時間」というのが長く流ればなるほど、埋没コストは高くなるので、辞められなくなっていく。
友人ももれることなく、この埋没コストに埋まっていっていました。
その夢に対して、なかなか芽が出ず、さらには才能がないことも痛感していく。
だけど、時間はかけていたので、辞めてしまってはもったいないのではないか?と思い、ダラダラと無駄な時間だけかけてしまう。
そんな時に、年齢制限を設けたんですね。
「最後○○歳になってダメだったら、きっぱり諦める」
そんな風にして、もう一度頑張ろうとトライすることにしました。
結果的に、夢はかないませんでしたが、もう一度頑張ると奮起したおかげで、決めた年齢制限に達したときスパッと辞めることができた。
埋没コストにとらわれずに辞めることができたという友人がいたんですよね。
実は芸人のサンドウィッチマンも同じようなエピソードを持っています。
芸人としては売れず、ダラダラと続けてしまっていた芸人生活。
もう辞めようかと思い、相方に相談したとき「俺たち本気でお笑いに向き合ったか?」ということを言われる。
「じゃあ、○○年だけ本気でやってダメだったらやめよう」と再起し、本気でお笑いに向き合う。
その結果、M-1に優勝し、大ブレイクを果たす。
僕の友人とは真逆のサクセスストーリーですが、制限を設けることにより、成功した一つの例だと思います。
この埋没コストにとらわれることなく物事をジャッジするという点では、有効な方法になるので、ぜひ活用してみてほしいテクニックの一つです。
徐々に減らしていく
次に紹介するのは、徐々に減らしていく、という方法です。
これは僕自身の体験談ですが、あるプロジェクトを3~4年ほどずっとやっていたんですね。
ただ、ある時に「これはもう無理かもな」っていうことで、戦略的撤退を余儀なくされました。
活路が見えなくなったというか、やっていく先も結構きついなというか。
だからこそ、辞めた方が合理的だなって判断したわけなんですが、ただ当然本気で3~4年も費やしていたので、中々スパッと辞めることができなかったんですよね。
そんな時に、「物理的に費やす時間を減らしていく」という方法を取っていったんですね。
具体的には、そのプロジェクトに対して1日8時間費やしていたとします。
それがもう数年間継続しているわけですから、惰性で1日8時間費やしてしまう。
そうじゃなく、1日4時間とか1日2時間とか、徐々に減らしていくんですよね。
やっぱり埋没コストがあるので「もしかしたらいけるんじゃないか?」とか「ここでやめたらすべて無駄にならないか?」っていう風に思うんですよね。
その分「じゃあ、1日2時間だけ上げるから、その2時間で成果が出たら続けていいよ」ときっぱりやめるんじゃなく、徐々に減らしていくことで、埋没コストを担保しつつ、新しいことに目を向けるタイミングを作る。
そうすることで、もったいないっていう感情に保険を掛けながら、精神的に頼り切った部分というのを薄めていくことができるんですよね。
この徐々に減らしていくというのは、個人的には結構おすすめで。
白黒はっきりと分けずに、徐々に変更していくことで、自然とフェードできているのでぜひ活用してほしいテクニックになります。
仕組みを改善する
次に紹介するのは、仕組みを改善するという方法です。
これはめちゃくちゃすごい投資家の方に聞いた話で、なるほどなって思ったことなんですが、投資家が「どのように損切をするのか?」ということに関して「仕組みを改善する」という風に言っていたんですね。
投資において、裁量トレードとシステムトレードの2種類あって。
裁量トレードというのは、自分のその時の経験や想いによってトレードのをする手法のこと。
システムトレードというのは、システムを決め、そのシステム通りにトレードをする手法のこと。
投資において100%儲かるという方法は存在しないので、どちらのトレード手法においても「損切する瞬間」というのは訪れます。
損切りするということは「自分の過ちを認める」という瞬間であり、「損失を確定させる」ということですから、少なからず痛みが伴うわけです。
仮に今この瞬間で売ってなかったらもしかしたら上がるかもしれない。
そう希望を抱いていても、上がることはなく、もしかしたらもっと最悪な出来事が起こるかもしれない。
そうした見えない未来と対話することによって、最善の手法を考え損切をしていくわけですが、勝てないトレーダーほど損切りできない傾向にあるわけです。
なぜ損切りできないのか?というと、先ほどから伝えている埋没コストが存在するため。
ただ稼いでいる投資家は裁量トレードだろうと、システムトレードだろうと、うまく損切りすることで、損失を制限し、勝つときに大きく買っている。
投資の格言で「損小利大」という言葉がありますが、この言葉を実践している人だけが、投資の世界で生き抜いているわけです。
じゃあ、どうしたら損切できるのか。
これは「自分が行った損切と、システムとは全く別物だ」という考えがあるからだそうなんですね。
要するに、勝てない投資家は「損切」をしてしまうと、「自分は間違っていた」という風に自分に責任転嫁してしまいます。
当然、自分自身を否定することは、大きなメンタル的なダメージを追うし、人間というのは自分を否定することは中々できないのが人間。
でもそうじゃなく、今回うまくいかなかったのはあくまで自分という人間の問題ではなく「システムの問題である」という風に勝てる投資家は考えます。
これは裁量トレードだろうが、システムトレードだろうが、両方同じなんですね。
このように自分の人格とシステムとを分けることによって、自分に責任転嫁することなく客観的に物事を考えることができるようになる。
勝てる投資家はもてなくこの思考があるそうなんですね。
例えるなら「就活」なんかがあげられると思います。
面接で落とされると多くの人が「俺はなんてダメな人間なんだろう」と考え、自分を自己否定する方向に進む。
でも、落ちた理由というのは「面接で自分の魅力を伝えきれなかった」「その会社とは合わなかった」という面接での行動における問題点が本質です。
会社にノーと言われたからと言って、自分の人格を否定されたわけでもなく、自分がダメだという烙印を押されたわけでもない。
もっと言えば、実は科学的に「面接官が優秀な人材を見抜くことができるか?」という研究において、「人間は短期間の面接だけで、人間の能力を見抜くことはできない」ということが明らかになっています。
そうなんです。
面接官の人間なんて、人を見抜くことなんてできやしないんですね。
つまり「アピール手法」というシステム、手法の問題で合って、人格の問題じゃないんですね。
ここを切り分けることが、埋没コストにとらわれずに適切に物事を判断することができる方法につながる訳です。
他人にコミットする
次の方法は「他人にコミットする」という方法です。
これはビッグマウスのスポーツ選手やアスリートなんかが実践している方法ですが、科学的な根拠がある方法でもあります。
ある本のピアニストなんかも実践している方法で、まだ局ができていないのにもかかわらず「新曲を来月リリースします」というように告知するようにしているんですね。
こうすることによって自分自身にプレッシャーをかけ、作曲するように行動を促す。
そうして、毎回毎回ピアノ作曲を手掛けている有名ピアニストの人がいたりします。
これは埋没コストにも応用が可能で。
お金や労力をかけて行った事が無駄だと悟ったとき。
それを埋没コストを気にして、中々辞めることができない。
そんな時に友人や家族なんかに向けて「俺はもう辞める」とコミットメントすることによって、その見えない鎖を断ち切ることができる。
禁煙とか悪習慣にも使われている手法ですが、これは埋没コストにも応用ができるわけです。
先ほどの損切の話でいえば「せっかく買ったのに、損を確定させたくないから、塩漬けしてしまっている」という保有株があるのなら、「もう来週に売る」という風に友人に言う。
そうすることによって、自分にプレッシャーをかけ、実行に移す。
「○○大学に受かる」と何年も浪人を続けているが、もう自分の実力じゃ受からないと悟っている。
なのにもかかわらず、今辞めたら勉強してきたすべての時間と労力が無駄になる気がして辞められない。
そんな状況なのであれば、「今年の受験に落ちたらもう辞めるわ」と家族に言う。
このようにしてコミットメントをうまく活用すると、辞めるための固い決意が生まれるのでお勧めな手法だったりします。
応用する
次に紹介するのは「応用する」という手法。
埋没コストに陥ってしまう一番の理由は「もったいない」という感情です。
5年も受験をしてきて、6年間という時間を無駄に浪人として過ごしてきた。
これを辞めてしまうと5年間という時間をドブに捨てることになる。
だから辞めることができない。
こうした「もったいない」という感情が、惰性を生み、悪習慣を続けてしまう要因となるわけです。
じゃあ、埋没コストにとらわれないようにするには「もったいない」という感情を生まなければいい。
要するに、ここでいう”5年間の受験勉強”という経験をうまく次に生かすことができれば、「受験」という呪縛からは解放されるわけです。
これがいわゆる応用。
「もう受験で大学に合格は出来ない」と悟った場合。
「受験には合格できなかったが、一人で勉強するという独学力が身に着いた。であるならば個人での家庭教師をしてこの経験を生かそう」
という風に、家庭教師や個別塾といったノウハウは応用可能なわけです。
また、「5年間の浪人生活」において培った「ダメな受験方法」という失敗談が残っている。
テレビのしくじり先生なんかでも証明されている通り、人というのは成功方法と同じぐらいかそれ以上に「失敗談」というものを欲している。
受験においても同じで「受験に受かる方法」は本屋に立ち並んでいるが、「受験で失敗する人の特徴」は置いてない。
だからこそ、その経験を生かして出版に挑戦してみるのでもいい。
また、独学力は身についているわけだから、資格勉強に取り組むのでも、英語を学んで海外に行くのにでも、いくらでも応用ができるわけです。
これらに応用することができれば「もったいない」という埋没コストにとらわれてしまう一番の原因である感情と分けて考えることができるので、バイアスにとらわれず行動することができる。
だからこそ「応用する」という方法が有効なわけです。
この応用するという方法を一番に伝えていたのが「スティーブジョブズ」です。
かの有名な大学の卒業スピーチでジョブズは「コネクティングドッズ」という名言を残しています。
要するに「将来何につながるかわからないが、その時夢中になれる点を作る。それが将来周りに回って、点が線となり、あなたの役に立つときがある。だからこそ今は目の前に夢中になり無数の点を打つことが大切なのだ」
という風に言っているのが、コネクティングドッズです。
ジョブズの人生でいえば、リール大学を中退する。
中退する前の大学は単位を取るためだけのものだった。
しかし、中退してからは単位のためではなく、「本当に興味のある授業」だけを受けられるようになった。
そこから楽しそうということだけで学んでいたフォントの授業。
それはのちにカリグラフィーとなり、Macに搭載される重要なフォントになった。
だけど当時のジョブズは「将来コンピューターのために、フォントが必要になるからこの授業を受けておこう」なんて考えなかったわけです。
ただ単にフォントって美しいなって考え、無心になって授業を受けていた。
それが後になって線となり、点がつながっていった。
だから、点を打ち続けることが大切なんだということを、スピーチで語るわけです。
大学受験という例えも同じで、一つの点で、それがどのようにつながるかはわからない。
でも、いつの日かつながる時は来るわけで。
その経験をしたからこそつながる”線”はあるわけです。
そんな点と点を結び線にするような、応用方法を考えるというのも、埋没コストというバイアスにとらわれないようにする一つの方法だと思います。
まとめ
ちょっと長くなったので最後にまとめると。
埋没コストとは、費やした時間や労力、お金というものが大きく感じる心理バイアスのこと。
そのため、すでに必要ないのに惰性で続けてしまったり、いらないのに持ち続けてしまったりといった現象を引き起こす。
この埋没コストから解き放たれるには、以下の方法が考えられる
- 同等の金額を出して買うかを問う
- 制限を設ける
- 徐々に減らす
- 仕組みの改善
- 他人にコミット
- 応用する
僕らの生活を見ていくと、本当に多くの埋没コストにとらわれていることが分かります。
「もったいない」という感情の元、すでに必要ないのにとって置いたり、続けてしまったり、辞められなかったり。
そしてこの埋没コストを断ち切ろうとするのも、実際にやってみるとかなり大変であることが往々にしてあります。
そんな時は、上記の方法を実践してみるといいんじゃないかなって思います。
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