今回はタイトルにある通り。
ビルパーキンス氏が書いた「DIE WITH ZERO」を見たので、まだ読んでいない人のためにざっくりと要約していきながら、その書評をしていこうと思います。
まず先に感想の結論から伝えてしまうと、今の働き方や行きつく先、将来に対して何か思い悩むことが少しでもあるのなら、一度手に取って読んでみるといいと思います。
その理由は、もちろんこの「DIE WITH ZERO」の中で、提唱されている生き方やタイトルの結論部にはヒントがあるかと思いますが、それ以上に「考えるきっかけ」がちりばめられていて。
「果たしてこのままでいいのか?」「どうやって最後を迎えたいか」「生きている意味とは」
そういったことを「考えるきっかけ」として何かしらのメッセージを受け取れる本だと思います。
数々の本には「こうしなさい」「ああしなさい」というように、疑問や危機提起に対してのアンサーが載せられていますが、総じてそういったアンサーは軽い発言やその人の状況を無視した内容であることが往々にしてありますが、このDIE WITH ZEROは「結論よりも考えるきっかけ」にすることで意味を発する本だと思います。
アリとキリギリス
ではさっそく。
ビルパーキンス著の「DIE WITH ZERO」をまだ読んでいない人もいると思うので、ざっくりと内容を要約していこうと思いますが、本を開いた最初に出てくる文章が「アリとキリギリス」の話になっています。
このアリとキリギリスのビルパーキンス氏の捉え方こそが、この本の方向性を示唆するもになっていて、ここから本書は始まっていきます。
童話アリとキリギリス。
この物語を簡単に言えば、真面目なアリと不真面目なキリギリスがいて、真面目アリは冬が来る時のことを考え、エッセエッセと働き蓄えをしていた。
一方キリギリスとは不真面目だったため、冬の準備を全くせず、自由に遊び惚けていた。
その結果、準備したアリは厳しい冬を乗り越えることができ、キリギリスは遊び惚けていたため、冬を乗り越えられず大変な目にあった。
簡単に言えばこんなストーリーがアリとキリギリスですが、ビルパーキンス氏は本書の中でこう指摘します。
「確かに蓄えることや準備することは大切だ。だが、アリはいったいいつになったら「自由」になるのか。」
そう。
これは僕らの生活の中でも全く同じことが言え、将来のために頑張って働き、子供が生まれ家庭を持てば、子供の将来のために働く。
でも、そうした「未来への備え」のために今を犠牲にしてきたが、一体いつその「将来」は訪れるのか。
アリのように冬を超えるためにエッセエッセと働き、「乗り越えられたら自由に生きよう」と考えるが、乗り越えられた暁には「次の冬のための労働」がもう待ち構えている。
そんな人生をずっと送るべきなのか?
ビルパーキンス氏は、そうした「疑問符」を最初僕らに投げかけてくるわけです。
エリンとジョン夫婦の話
続けてこの「DIE WITH ZERO」を象徴する話として登場するのは、弁護士として成功していた「エリンとジョン夫婦」の話です。
彼らはビルパーキンス氏の友人だったそうですが、働き盛りで3人の子供を持った夫婦にある悲惨な出来事が降りかかります。
それは悪性の腫瘍が旦那であるジョンのもとに降りかかり、その病気は背中や足にまで転移がみられている、ということを突如として知らされたのでした。
その上、余命は3か月と診断されてしまう。
その事実を知ってから、エリンは仕事をやめ、ジョンの余生に付き合うわけですが、一緒に映画に出かけたり、映画を見て過ごします。
子供を幼稚園から送り迎えしたりして過ごしていくわけですが、そこから間もなく旦那であるジョンはなくなってしまいます。
この話を取り上げてビルパーキンス氏は、「喜びを先送りにしてはいけない」という風に伝えています。
先ほどのアリとキリギリスの話も同様ですが、「いつか”来るであろう”喜び」のために今を犠牲にしている。
ただ、ジョンとエリン夫婦のように、当たり前のように明日が来る保証はないし、急に余命を宣告されるかもしれない。
その”いつか”のために、一番大切な「今」を犠牲にしていいのか。
このことがジョンとエリン夫婦の話から考えさせられるポイントとして、DIE WITH ZEROでは描かれます。
ファンド経営者ジョンの話
続いて、挙げられるのはファンド経営者の友人ジョンの話。
彼は著者ビルパーキンス氏の友人で、頭がよく優秀な人でした。
20代は仕事に夢中で家庭を顧みず働き、仕事で結果を出していきます。
彼は「仕事で成功したら、家族のために生きる」と決めており、ビルパーキンス氏に「1500万ドル稼いでも俺が働いていたら、頬を殴ってくれ」とお願いしていました。
ただ、仕事で成果を上げ続けるジョンは1500万ドルを貯めても、働くのをやめず、それを見たビルパーキンス氏も頬を殴ることはせず、傍で見守っていました。
その後も、目標を達成したのにもかかわらず、家族を顧みることはなく、その反面仕事ばかりにのめり込み、成果をドンドンと上げていきました。
気づけば、2500万ドル、1億ドルと資産を増やしていきますが、欲望は止まらず「何のために働いているのか」もわからないまま、成果を出し続けるジョン。
気づけば38歳となっており、40億ドル溜まったところで、リタイアすることを決意しました。
もちろん成果だけを見れば途方もない金額を稼ぎ出し成功したジョンですが、資産と同様に「幸福」が待っているのかと思っていたジョンは正反対に、後悔し続けていて、決して幸福とは言えない状態だそうでした。
家族を全く顧みず仕事ばかりを続けて、気づけば子供の成長した記憶が一切なく、子供の顔さえ覚えていない。
子供の成長はその時しか味わえないのに、すべてを仕事に費やしたことで、お金は手にしたかもしれないけれど、「幸福」や「充実」がまったくなく、心にぽっかりと穴が開いていることに気づいたジョン。
当初は1500万ドル溜まったら、仕事よりも家族や家庭のことにシフトしようと決めていたのに、それが出来なかったのは「悪しき習慣」からだったとジョンはのちに語っていて。
使いきれないほどの財産は残ったが、これまでの時間はもう戻ってこない、ということをジョンは悟ります。
ビルの父親の話
そして3つ目に紹介する話は、このDIE WITH ZEROを描いたビルの父親の話。
ビルの父親は病状に付しており、体の自由も聞かずに、外を出歩くこともできない。
そんな父親に対して、ビルはあるプレゼントを送りました。
それが、父親が昔フットボールプレイヤーだった現役時代の動画を編集して保存したiPadをプレゼントしたのでした。
病院に居続け何も楽しみがないビルの父親でしたが、当時のことを思い出し、時には笑い、時には泣いたりして、当時の思い出にふけったのでした。
この時ビルは「思い出や経験にこそ真の価値がある」ということを悟ります。
どういうことか。
DIE WITH ZEROを読んだ感想レビュー!
先ほどからピックアップした3つの話。
これは1つ1つバラバラで見るのではなく、DIE WITH ZEROを象徴した話をピックアップしていて。
それぞれ重要なメッセージが隠されています。
エリンとジョンの夫婦が余命3か月と知って「喜びを先送りにしてはいけない」ということを知った経験。
会社経営をしていたジョンがお金や仕事のことで家庭を顧みず、後悔した経験から「時間は戻らない」という経験。
これは要するに、一連の流れで見ると、
喜びを先送りにしてはいけない。なぜなら時間は有限であり、元には戻らないから。
ということが浮かび上がる。
そのうえで「じゃあ何をしたらいいのか?どう過ごしたらいいのか?」という答えに関して1つのアドバイスが、「思い出や経験に時間を使うことが人生においての財産になる」
そんなことを3つ目のエピソードとして、ビルの父親が楽しみがない病院生活のはざまで喜んでくれたプレゼントから紐解くことが出来ます。
もし仮に、手足が不自由で自由に身動きが取れない、ビルの父親に1億円プレゼントしたら喜ぶでしょうか。
多分喜ばない。
それは「お金はあの世に持っていけないから」
死ぬ間際でも喜怒哀楽を感じ、うれしかったのは、これまで経験してきた「想い出」で。
このことこそが、この本書のタイトルにある「DIE WITH ZERO」につながってくる。
んでね。
多分ここで紹介した3つの話の中で、おそらく引っかかる人が多いのは「2つ目に紹介したジョンの話」だと思います。
40億ドルも資産があり38歳で引退したが、それまでの時間に家族と一緒に過ごせなくて後悔している、といっていたあの話。
このエピソードに関して「38歳でお金の心配がないのならいいじゃないか」、「今から子供との思い出を作っても有り余るほど時間がある」「それだけの若さでリタイアできたのだからいい」
そんな意見があり、ジョンの「後悔している」という言葉に、腑に落ちない人もいるのかと思います。
ただ、これは当の本人以外分かりえない気持ち。
というか「成功した人しか分かり合えない気持ち」と言い換えたほうがいいかもしれない。
いわゆる「成功と幸せ」という話において、僕が一番好きで言い当てている言葉があるのですが、それが矢沢永吉の言葉で。
「成功するのはすぐだったけど、幸せになるのは時間がかかった」
こんな言葉をえいちゃんは残しています。
これはすなわち、成功と幸せというのは「同じ円線上にはない」ということを意味している。
同じレールの上にあるのであれば、成功した後は必ず幸せが待っているはず。
でも成功よりも多くの時間「幸せになるのには時間がかかった」、ということは「同じレールの上」に二つはあるのではなく、別々のレールにそれぞれ独立してあるものが、「成功と幸せ」というもの。
だから、成功してなくても幸せな人はいるし、幸せでも成功していない人もいる。
要するに別々のものだということ。
その証拠に、富も権力も名声も地位も、すべてを手に入れたスティーブジョブズは死ぬときに「もう少し家族との時間を作ればよかった」と、後悔した言葉を残しています。
まさに本書に出てくるジョンと全く同じ言葉を残していて、お金なんかよりもその瞬間の経験や思い出が幸福につながっていることを示している。
先ほどの2つ目のジョンの話に少しでも違和感を感じ「お金があるのだからいいじゃないか」と思っている人のほとんどは、「成功と幸せとがイコールだ」と思い込んでいる人が、違和感を持つ部分なんだと思います。
死ぬときにお金は持っていけず、死ねばすべてがなくなるのだから、この世を去るときに一番の価値となる「想い出」にお金や時間を使うこと。
アリとキリギリスのアリのように「いつか来るかもしれない恐怖や不安」のために働き、そのいつかはいつも来ず、「働き続ける習慣だけが中毒化」することを避けるようにと、説きます。
事実クラウディアハモンドさんが書いた「お金に支配されない13の真実」なんかでも「経験にお金を使うこと」の大切さが描かれています。
この科学的見地から見てみても、正しいことが見て取れる。
そういう意味でもこの本は考えさせられることが多く得られることが多い本だと思うので、是非一読しておくといいと思います。
参考にどうぞ。