今回はタイトルにある通り。
21世紀の資本を読んだので、その感想とザックリ内容を解説していこうと思います。
この本、結構面白いです。
あらすじ
まずざっくりとしたあらすじを。
この21世紀の資本という本のメインテーマとなるのは「分配」で。
このまま広がり続ける貧富の格差をどうやって阻止するのか。
食い止めるのか。
この「貧富の差」に対するアンサーとして、分配していくということがまず一つのメインテーマになっていて。
その方法論や研究などが解説されています。
んで。
この21世紀の資本が面白いのは、まず一つにトマピケティ氏自身がマサチューセッツ工科大学などで教鞭をふるい、経済学の賞を受賞する天才が資本主義に対する研究を述べているのも、面白い点ではありますが、もっと面白いのは別のところにあって。
世界20か国、200年もの膨大なデータを15年かけて研究したことが、この本のすごさ。
結構書店なんかを見て回ると、同じ作者の書籍を見かけることがあります。
書籍を量産して生み出すこと自体が悪いことではないですが、今回の「21世紀の資本」のように「15年間研究していた」とすれば、本を量産して書くことはできないわけです。
とすると、この本の分厚さからわかる通り、経済学の天才による汗水の結晶がこの本には詰まっている。
ここが僕的に一番この本の面白いポイントなのかなと思います。
貧富の差はますます広がる
ではさっそく。
本題のほうを分かりやすく、そして無駄を省いてざっくりと解説していくと。
まず1つ目に挙げられている、経済における人類最大の課題が「貧富の差」
先ほど挙げた通り、この21世紀の資本が取り組んでいるのメインテーマにもなっている部分です。
これはいろいろな所で聞いたことがあるかと思いますが、貧富差はこれからますます広がることをピケティ氏は訴えています。
実は以外にも、経済学者の中には「経済成長をすれば、貧富の差は縮まる」と訴える経済学者も多く。
どちらかといえば、この「貧富の差はますます広がる」という主張は、学者の中では異端の発信でした。
というのも、ほかの経済学者が研究していたのは、おおよそ過去100年間のデータでした。
その過去100年間の間では、貧富の差は経済成長とともに徐々に少なくなっていき、経済成長をすることにより、貧富の差をなくすことができると、多くの経済学者は訴えていたのでした。
そのため、日本を含め、多くの国々では経済成長の名のもとに、GDPを競い合い、バブルなどを追いかけていたわけです。
しかし、この100年間のデータというのは、第一次世界大戦や第2次世界大戦が含まれており、いわば「異常値」をはらんだデータであることをピケティ氏は訴えます。
この戦争という異常事態は、資本家から資本を国が回収したり、経済が急激に成長する源につながります。
だからこそ、過去200年以上のデータをもとに改めて計算しなおし、その結果「経済成長をしても貧富の差は広がる一方だ」という風にピケティ氏は結論付けたのでした。
そこでピケティ氏が伝えた一つの公式があります。
それが「r>g」
これは今でこそ経済学の中で定番の公式として出てきますが、この21世紀の資本でピケティ氏はこの公式を投げかけました。
貧富の差が広がる理由
このr>gが分かってくると、貧富の差が広がる理由が見えてくるので、この公式を解説していくと。
rというのは、資本収益率のことを指していて。
一方で、gというのは、経済成長率のことを指しています。
もっとわかりやすく言えば、rは「資本家」のお金の増え方で、gは「労働者」のお金の増え方と思ってもらえればオッケーです。
僕らが生きている「資本主義」というのは、株式会社などに代表されていて。
一番上に「資本家」がいて、その下に「従業員」という構成になっています。
会社のトップと聞くと「社長」と思い浮かべる人もいるかもしれませんが、資本家からやとわれて就任した社長もいるので、必ずしも社長がトップじゃないケースもあります。
株式会社なので、「株」を保有している人=資本家が、会社やひいては社会のトップに君臨しているわけですね。
そのうえで。
ピケティ氏はこのr>gという公式に、これらの数字を当てはめていきました。
r=4%、g=1~2%
これがどういうことかというと、資本家であるお金持ちがお金が増える割合が「4%」ということ。
またそれに対して労働者のお金が増える割合が「1~2%」ということ。
資本家と労働者の間には、2倍から4倍ほどの開きがあるわけです。
アメリカの場合、資本家が資産運用によって生み出した70%の資産を10%の富裕層が、保持していて。
労働者が生み出した、30%のお金を残りの90%を庶民の人たちが受け取っているとしています。
つまり、r>gという「お金持ちがどんどんお金持ちになり、貧乏な人はどんどん貧乏になる」ということが、貧富の差を広げている理由につながっているわけです。
貧富の差をなくすためには
では一体、どうやって行ったら貧富の差をなくすことができるのか。
21世紀の資本では、この解決策についても触れていて。
一つは世界的に累進課税を進めていく、ということをピケティ氏は挙げています。
累進課税というのは、収入が増えていけば払う税金が増えていくというもの。
当然これは日本でも累進課税を適応していますが、それがうまくいっていない理由が一つあります。
それが「タックスヘイブン」
このタックスヘイブンというのは、いわゆる「租税回避地」というもので、税金を払わないためにいろいろな方法が、この世界には用意されているわけです。
税金というのは、国によって割合が変わるので、税金が安い国に会社を作ったりして、税金をなるべく払わないようにする方法を使う。
そうして、税金逃れをしているのが今問題になったりしています。
これを「世界的にやって、お金持ちから税金をうまく徴収し分配する」ということをピケティ氏は提案しています。
資本主義が悪いのではない
ただね。
ここまで聞くと「お金持ち悪、労働者正義」というような感覚を抱きがちですが、ピケティ氏は資本主義自体を否定しているわけではありません。
「世襲資本主義」というものをピケティ氏は否定しているんですね。
この世襲資本主義というのは、ようするに「お金持ち家系がどんどんお金持ちになり、貧乏な家系に生まれたらずっと貧乏」という、決められたルート以外歩めない人生に対してピケティ氏は否定しています。
貧乏に生まれた人であっても才能がある人はいるし、挑戦する権利はだれにでもあっていいはずだ、と。
それが努力をしないということであれば、その人が成功することはないけれど、「努力ができない環境」にあるのであれば、それは平等じゃない。
そんな風に言っているわけですね。
また、「すべて国が管理して、分配すればいい」と考える人もいるかもしれませんが、それはいわゆる社会主義。
これまで歴史の中で、人間は競争心がなくなれば、努力しなくなり、怠惰になってしまうことは歴史が証明しているわけです。
ソ連の崩壊も、中国の方向転換も、「競争」というものを取り除いた結果、生まれてしまった悲劇なわけです。
ですから、「資本主義」における「競争」は必要だが、「努力すらすることができない環境」はいけない、ということをピケティ氏は訴えています。
つまり、頑張るか頑張らないかはその人次第だが、「同じスタートライン」に立つことできることを願っている、ということですね。
そのため資本主義そのものが悪いのではなく、世襲資本主義がいけないのだ、とピケティ氏は訴えているわけです。
感想レビュー
要するに、この21世紀の資本をまとめていくと。
労働者と資本家の貧富の差はますます広がる。
それはr>gという公式が成り立つため。
それは世襲資本主義を産み、「努力すらできない人」を産む結果につながってしまう。
だからこそ、世界的に協力し、世界的に累進課税を作り富を分配する必要がある。
これが本当にざっくりとした21世紀の資本のまとめになります。
んで。
この本を読んで冒頭にも伝えましたが、結構面白かったですね。
今でこそ当たり前の「貧富の差はますます広がる」ということは、実は「マイノリティ」であって。
多くの人の固定概念になっている「貧富の差はますます広がる」というのは、この本をきっかけにマジョリティになっていったんだ、と。
ちょっと例えは違うかもしれませんが、地球が平面だと信じられていた時代に「地球は丸い」と訴えているようなことに似ているような。
そんな気さえしました。
またr>gに関しても、フォーブスのお金持ちランキングを見てみても、多くが会社経営者か資本家です。
というか、ジェフベゾスもビルゲイツも、ウォーレンバフェットも、そのほとんどがAmazonやMicrosoftの「株」により増えている資産水位がほとんどです。
そうみてみると、労働の対価より資本収益率の伸び率がいかに高いかが分かります。
このr>gも今になってニュースなんかで目にするようになりましたが、打ち出したピケティ氏がどれだけ研究したのかが見えてくる1つのワードかと思います。
本書の内容はかなりざっくりではありますが、要点はまとめているので、おおよそは網羅できていると思います。
ただ、もっと細かく見たいという方は是非一度読んでみるといいと思いますね。