メンタルアカウンティングを生かした超実践的マーケティング手法5選!

今回はタイトルにある通りなんですが、以前メルマガ読者の方から「マーケティングやライティングに関して実践的なノウハウがあれば教えてください」ってな質問をもらっていたので、その質問に答えながら、僕自身も活用している実践的なマーケティング手法を伝えていこうと思います。

今回取り上げるのが「メンタルアカウンティング」という心理学や行動経済学で言われているもので、このメンタルアカウンティングを知っているかどうかで、商品の売れやすさや消費者の行動心理っていうものの理解が全く変わってくるので、メンタルアカウンティングを活用したマーケティング手法を解説していこうと思います。

メンタルアカウンティングとは

では早速。

メンタルアカウンティングとはいったい何なのか。

この部分を知らない人もいると思うので、皆で足並みをそろえる意味も込めて、メンタルアカウンティングの解説から始めていくと。

メンタルアカウンティングとは、心のカウンターのようなもので、心の中で無意識に積み重なっているカウンターを指します。

これは具体的に解説した方が分かりやすいと思うので、具体例を交えて解説すると。

よくメンタルアカウンティングの例で出てくるのは、映画館のチケットの実験が有名で。

映画を見るために前売り券を買うパターンと、映画代と同等の2000円を用意して言ったパターンとの2つを検証していきます。

前売り券も当日券も値段は全く同じなわけですが、両者ともチケットとお金を無くしてしまうんですね。

両者とも同じ金額分の損失を被るわけですが、両者がとった行動はまるっきり違いました。

前売り券を買ったパターンの人っていうのは、映画館について前売り券を無くしたことに気づいたとき、ショックを受けると同時に、追加で映画代を払って映画を見るということはしませんでした。

たいして、2000円という現金を無くした人というのは、当然ショックを受けるわけですが、無くした2000円にプラスして、追加でお金を払い映画を見るという行動をしたんですね。

前売り券を無くした人は、映画を見るのを中止し、2000円無くした人は映画を見ることを中止しなかった。

この両者の違いこそが、メンタルアカウンティングです。

どういうことかと言うと。

人間というのは、心の中で「カウンター」のようなものを持っています。

このカウンターによって、先ほどの例で言えば自由に使える自分の丘の中から「映画代」を割り振っていたわけです。

しかし、前売り券を落としてしまったパターンの人は、すでに映画代に割り振られているお金が無くなってしまったので、追加でお金を払うことはしなかったんですね。

要は、3600円という、無くした分と追加で払う分の金額が、カウンターを上回っており、すでに前売り券として、映画代にお金を払っていたため、追加で払う気力がわかなかったわけです。

ただ一方で、現金で2000円落としてしまった人というのは、2000円という金額ではあるものの、”映画代に使う”という風に、前売り券を買っていたわけじゃありませんでした。

つまり、映画というカウンターに追加されていたお金じゃないわけです。

もしかしたら、お菓子を買うための2000円だったのかもしれないし、貯金に回すための2000円だったのかもしれない。

間違いないのは「映画にはまだお金は使っていない」ということであり、この人にとってのカウンターは空だったわけです。

だからこそ、映画館に着いて2000円無くしたことに気づいても、彼は追加で2000円払い映画を見ることにためらいがなかったわけです。

これがいわゆるメンタルアカウンティングで、心のカウンターの意味になります。

リディファインする

まあ、おおよそのケースで、メンタルアカウンティングって何だろう?っていうここまでは書かれるわけですが、ほとんどのケースで「これを知ってどう生かせばいいの?」となるのがオチ。

研究者とかは、それを研究するのが仕事ですが、実際にメンタルアカウンティングなどは実践として生かして初めて役に立つわけです。

ただ、最前線でマーケティングで活用している人はおらず、実践的に語られることも少ない。

なのでここからは実際にこのメンタルアカウンティングっていうのを、どう生かしていけばいいのか。

この部分を解説していこうと思います。

まず一つ目はリディファインです。

リディファインというのは、日本語でいうと「再定義」という言葉になります。

言い換えるなら「再定義する」ということが、このメンタルアカウンティングを活用する方法だということですね。

先ほども映画の例で伝えた通り、人間には心のカウンターが存在します。

そのカウンターが満杯になってしまうと、その系列の商品を買うことはなくなってしまいます。

例えば、ひと月に洋服代は大体1万円ぐらいと決めている場合、すでに1万円分の洋服を買っていたら、そこから5000円のアウターを買うのは躊躇してしまうでしょう。

ただ、まだ今月は洋服代に1円も使っていないのだとしたら、5000円のアウターなら残り5000円分も余るし安いなと思って買ってしまう。

このように、人には制限のあるカウンターの上限が設定されているわけです。

その上で、人には習慣があるわけですから、大体好きなブランドやいつも買うアパレルショップなど、決まったお店が存在する。

新たに新しい商品を提案する側としたら、そのカウンターがギリギリ、ないしはもう既に埋まっている状態にセールスしてもやはり売れないわけです。

そんな時に、「再定義」することによって、洋服というカウンターからズラシ、別の用途として買ってもらうことで、空のカウンターにアクセスすることになるので、購買者のメンタルアカウンティングに割り込むことができるわけです。

例えば、5000円のアウターで、すでに今月1万円の洋服代を使っている場合。

この5000円のアウターを「洋服」と定義したら、もう変えないわけです。

だけど、この人が着るのを想定するのではなく「プレゼント」としたらどうでしょう。

プレゼント用と再定義すると、購入者のカウンターは「交際費」として計上させることができるかもしれないし、「誕生日のお祝い」というカウンターに割り込めるかもしれない。

そうすると、ひと月の洋服代を上回ることなく、購入者の紐を緩ませることができる。

これがまさに”再定義する”ということの意味です。

ですから、あなたが売ろうとしている商品を、どのように”再定義”し、新しいカウンターにカウントさせられるのか。

この部分を考えると、新たなニーズや売り込み方が見えてくるかと思います。

クロスセル化する

次に紹介するメンタルアカウンティングを利用したマーケティング手法は”クロスセル化させる”ということです。

クロスセルというのは、いわゆる”抱き合わせ”であったり、”ついで買い”という意味があって、コンビニのレジ横にある商品だったりが、このクロスセルになります。

すでに買う商品は決まっていて、レジに運んだけど、ついでにこの商品も買っておこう。

そうした意図がクロスセルというものですが、これもメンタルアカウンティングを利用したマーケティング手法に活用できます。

例えば、先ほどの洋服の例で紹介すると。

1万円という心のカウンターが存在していたとして。

既に、7000円分の服を買っている。

あなたが提案するアウターは5000円なので、1万円というキャパを超えてしまっている。

そんな状態があるとします。

ただこのアウターに”アクセサリー”という要素が含まれていた場合、月にアクセサリーを3000円分買えるというカウンターと合わせることによって、5000円のアウターを変えるようになる。

要するに、他のカウンターを合わせた価値を提供することができれば、メンタルアカウンティングの枠を超えた需要を提供できるわけです。

街にあふれるニーズとしては、メンズ用のオールインワン化粧水なんていうのがありますが、まさにこれはクロスセル化された商品の例ですよね。

メンズでは、化粧品やらコスメに対するカウンターっていうのは、めちゃくちゃコストが低く設定されている。

女性のように、化粧水が数千円、乳液数千円というようなカウンターは存在していない。

それらを個別で売るのではなく、「身だしなみ代」というひとくくりにして、カウンターのキャパシティを広げたニーズを”オールインワン”としての価値で提供している。

だからこそ、これだけひろがり、メンタルアカウンティングの枠を超えたニーズが獲得できているわけです。

このように、一つのジャンルとして商品を販売するのではなく、ジャンルを超えたニーズを提供できないか?と考えることによって、お客さんの予算を想定以上に引っ張ってくることができるので、クロスセル化もかなりおすすめできる手法になります。

サブスクリプション

おそらくですが、このメンタルアカウンティングを一番うまく活用している例というのが、サブスクリプションでしょう。

サブスクリプションというのは、メンタルアカウンティングを熟知している人が活用したビジネスモデルであり、昨今ではいかにサブスクを取り入れるか?がビジネスの肝になっているぐらい大切なものです。

ほとんどの人は知っていると思いますが、月額課金というのがサブスクという意味になるわけですが、サブスクに登録しているということは、すでに月初めの段階から「カウンターの容量を確保している」という状態になります。

例えば、アマゾンプライムやネットフリックスなどに登録している人は、このサブスクリプションを前提に「ひと月に使える娯楽代は○○円」というように決めている。

もう既に、「予約している状態」をサブスクでは取ることができるわけです。

月が始まる前に、すでにお客さんの予算を取っている。

だからこそ、サブスクリプションはメンタルアカウンティングをめちゃくちゃ上手く活用できているわけです。

加えて解説しておくと。

人間というのは、苦しみは徐々に慣れ、その痛みを忘れる傾向にあります。

日本のことわざの中でも「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ということわざがありますが、サブスクとはまさにこれ。

月額を申し込むときは、めちゃくちゃ悩みますが、いざ申し込んで自動で引き落とされるようになると、まったく痛みを感じない。

利用者は、痛みと伴わずに、ずっと課金がなされるので、ビジネス上でもめちゃくちゃ安定するわけです。

さらに、このサブスクの料金があること前提で、カウンターのメモリが設定される。

要するに、欲求の最重要事項にサブスクが設定されるわけです。

例えるのであれば、「家賃」のようなもので、まずはじめに確保すべきお金という位置づけにすることができるのがサブスクです。

ですから、メンタルアカウンティングを活用するという意味では、「いかにサブスクモデルを導入し、いの一番に予算を確保するように設計するか?」を考えるのが、一番ビジネスが安定するということです。

もっと言えば、先ほども伝えた通り、「契約するまで」が一番サブスクの大変なところであり、ユーザーが頭を悩ませるポイント。

500円のサブスクは、500円分の商品購入とはわけが違い、500円分の数十倍もの高さのインパクトがあるのがサブスクです。

ですから、いかに「導入時」に痛みを和らげるか。

自然な導入経路を作りこむことが出来るのか。

それは初月無料という口コミなのか、退会自由という制度なのか。

この辺りを考えこむことが重要なファクターになってくると思います。

散財期に混ぜ込む

続いては散財期に混ぜ込むという方法です。

散財期っていうのは、要するに臨時収入がある時期ということですね。

通年で会社のボーナスがある時期や、給料日前後などがこの散財期に当たります。

というのも、散財期というのはお金をよく使う傾向にあることが分かっています。

給料が入ったらお金を使うということは大半の人がイメージできると思いますが、それだけじゃなくって。

余分に給料が支払われると、合理的にお金を使うことが無くなるということが分かっています。

これは給料を渡す実験で証明されていて、このブログでも紹介したことがある研究です。

簡単に言えば、アルバイトを募集し、8000円の給料を渡したグループと6000円の給料プラス「あなたは頑張ったから」ということで2000円のチップを渡したグループとの2つに分けます。

その後「給料をどのように使うのか?」ということを追跡調査していった結果、ボーナスをもらったグループの人の方が散在する割合とその金額が高いことが明らかになっています。

これは最初から「給料8000円」と渡されたグループにとって、労働による対価なのできちんと使おう、大切に使おうという心理が働く。

その一方で、ボーナスとしてお金をもらうと、対価としては6000円であまりものとして2000円というお金が存在するので、労働の対価じゃない分、ぞんざいに使ってもいいだろうという心理が働きます。

その結果、身にならないお金を使い、散財額が増えたということが明らかになっている、ということなんですね。

当然海外の研究なんで、8000円ということじゃなく、ドルベースでの話なんですが、日本でも同様のことが確認されています。

これがいわゆる散財期に当たる定義で、ただ単に「お金があるから使ってもらえる」っていう話じゃないんですね。

お金があるから散財するか?っていうそうじゃないのは、上記の研究でも明らかで、大変な想いをして稼いだお金というのは、大切に使うのが人間心理。

そこに、ルーティンワーク外の新たな商品ネットワークを構築しようと思ったら、やはり「散財期」に提案する方がはるかに簡単だということが言えるわけです。

ですから、ボーナスなどが支給されるタイミングでセールスをするっていうのは、マーケティングカレンダーに記載しておいた方がいいタイミングですね。

カウンターのアッパー変更

続いてはカウンターのアッパー変更です。

これはいわゆるメンタルアカウンティングである、心のカウンターの上限を引き上げるということです。

先ほどアパレルの話でいえば、洋服に1万円の予算をひと月に設定している場合。

衣替えなどの時期なんかは、ユニクロのヒートテックとか、そういった重要度の高い商品が買われ、どうしても1万円という予算内に自分の商品を組み込むということが難しいケースもやっぱり存在する。

そんな時は「上限の引き上げ」をした方が効果的であることが多くあります。

どうしたら上限を引き上げられるのか?というと、これはもう”教育”しかありません。

「なぜ1万円以上服にコストをかけた方がいいのか」

「今この時期に服にお金をかけた方がいい理由」

「少し贅沢をしてもお金をかけるべき意味」

こうしたことを徹底的に教育していき、心のカウンターの上限を引き上げることができれば、当然購買率は上がっていきます。

正直、この教育さえできれば、いくらでもカウンターの上限を引き上げることができるので、商品を買ってもらえる割合や買ってもらいやすさは段違いです。

ここら辺に関しては当然ライティングのスキルが必要にはなるわけですが、知っておいて損はない知識でしょう。

まとめ

少し長くなったので最後にまとめておくと。

メンタルアカウンティングとは、心のカウンターであり、人は心の中で使っていいお金などの上限や目安を用いているということを意味している。

例で挙げたのは、映画代として使ったお金が無くなると映画を見ようとは思わないが、その他のお金を無くしても映画代を無くしたわけじゃないので、再度購入するという傾向がみられる。

このメンタルアカウンティングをマーケティングで生かす手段は以下の方法が考えられる。

  1. リディファインする
  2. クロスセル化する
  3. サブスクリプションモデルを導入する
  4. 散財期に混ぜ込む
  5. カウンターのアッパー変更

ぜひ参考にどうぞ。

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では。